実際に日本一周の旅が始まる前に体力的に1日何キロくらい走れるのか、体感で知っておきたい。そこでひとつの目安となるのが150キロ。1日の走行距離は100キロ前後がベストだが、状況によっては150キロくらい走ることがあるかもしれない。そんな思いから1日150キロ走れるか? 1度挑戦してみることにする。
自宅(神奈川県相模原市)から片道約75キロ・往復150キロといったら、どのあたりになるのか? グーグルマップで調べみると三浦半島の南端、城ケ島辺りがちょうど良さそうだった。コース的にも海岸線が走れて気持ちが良さそうだし、海に囲まれた島が目的地というのも気分がいい。よし、城ケ島に決定だ。
卓上計算では平均時速15キロとして10時間。さらに休憩や食事、撮影、道草等の時間を3時間をプラスして合計13時間。朝6時スタート、夜7時ゴールに設定をした。
体力ともう1つの問題はバッテリー。ヤマハYPJ-ERはカタログによるとアシスト力の弱い「ECOモード」で152キロの走行可能となっているが、それはあくまでカタログデータ。路面状態や風向き、重量、気温などによってはもっと少ない可能性もある。計画通りに走れる保証はひとつもないが、そんな状態が逆にワクワクしているのも事実だった。
2020年12月29日。150キロ走行チャレンジ当日。天気くもり。
朝6時。気温は1桁の寒さ。上半身は防寒を考えてフリースの上に防風性と防水性の高いレインパーカー。逆に下半身は動きやすいタイツにハーフパンツのみ。防寒よりも動きやすさを優先した。寒い時期に自転車で長距離を走るのは初めてなので、服装選びは最後まで迷った。
12月下旬の朝6時、まだ夜が明けていない。ヘッドライトを点け、さらにテールライトも点滅させ、走り出す。スタートはまだ体力が余っているので、バッテリーの消耗を抑えるためにアシストなしで走る。車重が重いのでペダルは重く、足はパンパンになるが、体はどんどん温まって行く。
県道46号をひたすら南下する。交通量が少ないのでガンガン進み、一気に座間市に入った。白々と夜が明けてくる、JR相模線を越える陸橋を登って行くと視界が開けて遠くに大山丹沢の山々が見えた。すがすがしい気持ちで山々を眺める。
海老名市内。アシストなしで1時間ぐらい走っただろうか、無理をしてこいだせいか、それとも寒さのせいか右膝が痛くなってきた。体を壊しては元も子もない、ここからはおとなしく電動アシストを使うことにする。
7時50分。寒川町に入った。おなかがすいたのでコンビニに立ち寄り、朝ごはん。立ったまま温かいお茶とおにぎりを補給した。徐々に交通量が増えてきているが、年末に近いためか、意外にトラックは少ない。
茅ケ崎市。海岸線を走る国道134号に8時半に到着。自宅から28キロ。海を見るために歩道橋で国道を横断して、海辺を走る自転車道路へ入って行った。海に出ると太陽の光が全身を包み込み、一気に体が温かくなる。自転車道路を走っていると散歩やジョギングをする人、サーファーなど、たくさん人とすれ違う。
サザンビーチのシンボル、縁結びスポット「茅ケ崎サザンC」で撮影を兼ねて休憩。自転車道路から海の眺めはいいのだが、道幅が狭く砂が多いためスピードが出せない。少しペースを上げたいので辻堂海岸から、国道134号の車道へ移動する。
藤沢市、右手に江の島が見えてきた。当初は橋を渡って江の島に寄ろうかと思ったが、少しでも早く城ケ島に着きたいので、そのまま直進する。鎌倉高校前駅辺りから海がぐっと近くなる。交通量も増えてきたような気がする。同時にオートバイやロードバイクの姿も目立つようになった。
由比ガ浜を越えて逗子市へ。田越川を渡った交差点にあるコンビニで2度目の休憩。今回はコーヒーにする。家からここまで49キロ。約4時間で全行程の3分の1を走ったことになる。まずまず順調だ。バッテリーもまだ80%以上残っている。とりあえずここから先はバッテリー消耗のことは気にせず走っても良さそうだ。先が明るくなった。
国道134号は車が多く疲れるので海寄りのローカル道「森戸海岸線」へ入って行く。初めて走る道だが、葉山港が見えたり、古い家並みが残っていたり、オシャレなお店があったり… なかなか面白い。葉山御用邸の前で国道134号と合流。
海を眺めながら国道を進んで行く。京急久里浜線の終着駅「三崎口駅」を過ぎたところで牛丼屋を発見。11時40分、少し早いが昼メシにする。食べ飽きているはずの牛丼なのに、めちゃくちゃうまい。まるで胃袋に吸い込まれるように牛丼が入って行く。運動しているときは何でもおいしく感じる。本当は城ケ島でおいしい海鮮を食べたほうが絵になるんだけどね(笑)、今回は一刻も早くおなかを満たすことが最優先。店を出ると、素早くサドルにまたがった。
三浦消防署で国道134号とお別れ。県道26号「横須賀三崎線」に入って行くと、緩やかな下りになった。三浦半島の端へ向かっていることを実感する。穏やかな住宅地の道を快調に進んで行くと「城ケ島大橋」の標識が現れる。よし、もう少しだ。さらにペダルをこぐと前方に大きな橋が見えてきた! 「おおおっ、やった!城ケ島だ!」僕は青空に向かって握りこぶしを突き上げた。
城ケ島上陸:12時32分。走行距離:71.7キロ。バッテリー残量:72%。
【藤原かんいち】