新型コロナウイルス感染拡大が止まらないアメリカでは感染者数が400万人を超え、特に深刻なカリフォルニア州では22日に累計感染者数が41万人を超えて、3月から4月にかけて感染者が急増したニューヨーク州を抜いて全米最多となりました。

カリフォルニアは早期に外出自粛命令を出して経済活動をストップさせたことで感染拡大を抑え込んだように思われていましたが、5月末から段階的に経済活動を再開させると感染者数は増え続け、7月4日の独立記念日でさらに人と人との接触が増えたことで感染が爆発的に広がったとみられています。

アメリカのみならず世界各地で第2波によって再び経済活動を後退させる動きが広まる中、日本では「Go To トラベル」が始まったことにアメリカのメディアは驚愕しています。「多くの国民が第2波に怯える中で政府は旅行キャンペーンを強行」「専門家が感染急増を指摘する中で観光キャンペーンを開始」「Go to Travel or Trouble?」など日本政府の政策を批判する記事が目立ちますが、入院患者数が先週過去最多を4度更新したLAでは、旅行解禁どころか再びロックダウンする可能性も指摘され始めています。

カリフォルニア州のニューサム知事は先月下旬、LAを含む感染拡大が懸念される地域で、一度は再開を認めた理美容室やスポーツジムの閉鎖を命じ、再び「ステイ・ホーム」が呼びかけられています。3月中旬のような外出自粛命令が再び出ることも予想されるLAの現状をまとめてみました。

閉鎖中の映画館の入口前が臨時でレストランの飲食スペースに
閉鎖中の映画館の入口前が臨時でレストランの飲食スペースに
ビバリーヒルズでも遊歩道にパラソルとテーブルを並べてレストランが営業を続けています
ビバリーヒルズでも遊歩道にパラソルとテーブルを並べてレストランが営業を続けています

●7月24日現在の新型コロナウイルス感染者に関する基本データ

累計感染者数:16万8757人 死亡者数:4300人 入院患者数:1928人

●PCR検査

LA郡では居住者は無料で検査を受けることができ、ドジャースタジアムの駐車場に設置された全米最大規模の1日あたり6000人の検査が可能なドライブスルー検査場をはじめ、一部ドラッグストアなど市内複数個所に検査場が設置されています。現時点で1週間平均2万372人が検査を受けており、累計数は160万人を超え、平均陽性率は8.5%となっています。

検査体制の拡充を目指していたLAでは症状のあるなしに関わらず希望者は全員検査を受けることができるとされてきましたが、感染者数の急増に伴う検査現場の逼迫から、今では症状がある人と濃厚接触の疑いがある人を優先する方針に切り替えています。検査を受けるには予約が必要で、鼻の奥または喉の粘膜を綿棒のようなものでこする方法で行われ、平均で3日から1週間程度で検査結果が分かるとされています。また、PCR検査とは別に有料で過去に感染していたかどうか分かる抗体検査も病院などで受けることができます。

●隔離・入院

検査で陽性反応が出た場合も無症状や軽症の場合は、自宅での隔離が一般的です。また、会社内で感染者が出た場合などで濃厚接触による感染が疑われるケースでも、症状が出ていない場合は2週間自己隔離するよう求めています。

●旅行

国境を接するカナダとメキシコ間は、物資の輸送などエッセンシャル(必要不可欠)な場合を除いて入国は認められておらず、事実上3月から国境は封鎖されています。また、中国やイラン、英国、EU諸国等に過去14日間滞在した外国人の入国も禁じられています。日本からの入国は可能ですが、入国後は14日間自宅待機で自主隔離する必要があります。米国からの海外旅行は行き先の国によって異なりますが、徐々に国際便も復活し始めてはいます。日本行きの飛行機も本数は激減していますが、LAからはANAとJALが減便で飛んでいるので帰国することは可能です。国内移動に関しては、多くの州で感染者の多いカリフォルニアやアリゾナ、フロリダやテキサスなど南部からの旅行者に対して到着後14日間の自主隔離が命じられており、違反すると罰金が科せられるケースもあるため、州をまたいだ移動や旅行は事実上まだ難しいのが現状です。ホテルは営業を再開しているため、ビジネスやプライベートで利用することは可能です。

入店人数を制限して営業を再開したブランド店には多くの人が行列を作っていました
入店人数を制限して営業を再開したブランド店には多くの人が行列を作っていました

●観光施設

開園65周年となる今月17日に再開を発表していたアナハイムにあるディズニーランドは、感染が再び拡大したことを受けて延期を発表。ユニバーサルスタジオやナッツベリーファームなどのテーマパークは全て3月中旬から閉鎖されたままです。また、LA動物園やロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)やゲッティミュージアムなど美術館なども再び閉鎖されています。国立公園は入場制限などを行い、マスク着用など感染予防対策を講じた上で入園が認められています。大リーグは無観客で23日に再開しましたが、現時点でコンサートやライブなど大型イベントの再開のめどは立っていません。

アウトドアでの営業が認められた店はこのような市が発行した許可書を入口付近に見えるように提示してあります
アウトドアでの営業が認められた店はこのような市が発行した許可書を入口付近に見えるように提示してあります

●飲食や買い物

店内飲食が再開したレストランやバーも先月下旬から再び閉鎖命令が出され、現在はアウトドアの席のみ営業が認められています。また、食べ物を提供しないバーは完全閉鎖の対象となっており、食事の提供がないおつまみだけのバーやブリュワリー、ワイナリーは全て閉鎖しています。レストランではパンデミックによる特例で、歩道や駐車場の一部に座席を設置してアウトドアの席を新たに確保することが認められ、路上にテーブルを並べたり、駐車場にテントを設置して営業を続ける店も目立ちますが、テイクアウトとデリバリー限定で営業する店も多くあります。

屋内ショッピングモールは閉鎖が命じられましたが、屋外ショッピングモールや一般の小売店は、入店時のマスク着用や店内でのソーシャルディスタンスの確保など感染対策を講じた上で通常通り営業しています。現在閉鎖命令が出ているのは、理美容室、ネイルサロン、スポーツジム、映画館など。ただ、これらも屋外での営業は認められたようで、店の外にテントを張って髪を切る美容室なども出始めています。

この1カ月で劇的に人の流れが増えたビバリーヒルズの高級ブランド街ロデオドライブ
この1カ月で劇的に人の流れが増えたビバリーヒルズの高級ブランド街ロデオドライブ
営業を続けるため、店頭の駐車場にテントを設置して外で髪を切る理髪店
営業を続けるため、店頭の駐車場にテントを設置して外で髪を切る理髪店

●集会

礼拝施設も再び閉鎖が命じられるなど、不特定多数の人が集まる集会は禁止されています。また、たとえホームパーティーやレストランでの飲食などでも、同居する家族以外の人と集うことを自粛するよう強く求められており、不要不急の外出自粛命令は4カ月経った今も継続中です。

●学校

アメリカの学校は現在夏休み中ですが、来月から始まる新学期を前にLAの公立学校は新学期もオンライン授業を継続することを発表しています。LAでは3月中旬からオンライン授業に切り替わっており、感染が収束するまで当面は対面での授業を行わない方針です。また、カリフォルニア大学ロサンゼルス校など大学の多くも今秋以降の学期もほとんどの授業をオンラインで行うと発表しています。

(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)