新型コロナウイルス感染拡大の影響で昨年3月中旬から閉鎖されていたロサンゼルス(LA)の映画館が15日、およそ1年ぶりに営業が再開されました。アメリカでは感染拡大を受けてほぼ全ての映画館が閉鎖となったものの、昨夏にはテキサスやフロリダ州などで次々と営業が再開され、ニューヨークでも今月5日から営業再開が認められて残るはハリウッド映画のお膝元であるLAを含むカリフォルニア州南部だけとなっていました。全米でもっとも感染者数が多いカリフォルニア州の中でもLAは医療体制が逼迫(ひっぱく)するなど長期にわたって深刻な感染拡大が続き、1年間にわたる厳しい経済活動の制限が設けられていましたが、新規感染者数の減少やワクチン接種の普及を受け、感染状況に基づき実施されている4段階の行動並びに経済活動の規制が最も厳しいグループから1段階引き下げられたことで、ようやく映画館など娯楽施設の営業が可能となったのです。

チケット売り場は閑散としています
チケット売り場は閑散としています

偶然にも15日はアカデミー賞ノミネーションの発表日と重なり、この1年間は多くの新作映画が劇場公開を延期したり、断念したりと苦境に立たされてきただけに、ハリウッド関係者にとっては喜びに満ちた1日となりました。解雇した従業員の再雇用や安全対策などに時間を要することから、15日に営業を再開できたのは一部の映画館のみでしたが、それでもこの日を待ちわびていた大勢の映画ファンたちがさっそく劇場に足を運んでいました。

チケットもぎりの前にはアクリル板が設置されていました
チケットもぎりの前にはアクリル板が設置されていました

再開一番乗りを果たしたのは、米映画館チェーン最大手AMCエンターテイメント・ホールディングスで、LA近郊にある35の劇場のうち、2カ所で15日から営業を再開させ、残りの劇場についても19日から順次再開させていく方針のようです。全米第2位のリーガル・シネマズやハリウッドにあるスターの手形や足形で有名なグローマンズ・チャイニーズ・シアターなどは、まだ営業を再開させていませんが、LAの街に映画が戻ってきたことはこの街で暮らす多くの人たちにとっては朗報。試写会などで年間を通じて数えきれないほど映画館に通っていた筆者にとっても、この1年間は劇場で映画を見る機会はゼロだっただけに、感慨深い気持ちでいっぱいです。

セルフのドリンクバーは利用停止に
セルフのドリンクバーは利用停止に

営業を再開させた映画館は今どうなっているのか、さっそく取材を兼ねて映画鑑賞を楽しんできました。LA郡当局は感染予防対策として、1回の上映で収容人数を25%以下、または1スクリーンあたり最大100人までと上限を定めており、座席指定する際は他の観客と隣り合わせにならないよう間隔を空ける対策が取られています。収容人数に制限があるため、事前にオンラインでチケットを購入しましたが、購入済みの座席の両隣数席と前後の席は選択ができないようになっており、ソーシャルディスタンス対策が取られていることが分かります。空席があれば劇場で当日券も購入できますが、設置された機械でのみ購入が可能で、キャッシュレスで現金での支払いはNGとのこと。入場の際はスマートフォンを使ってQRコードで入場するペーパーレスとなっていました。

入り口前にはソーシャルディスタンスの確保を促す看板と共に除菌シートも
入り口前にはソーシャルディスタンスの確保を促す看板と共に除菌シートも

劇場に入るにはマスク着用は必須ですが、検温などの体調チェックは特にありません。混雑緩和のために時間をずらして上映をしているようで、ロビーやチケット売り場に人はほとんどいません。混雑を避けて夜の上映ではなく、夕方の時間帯を選んだこともあり、劇場内には20人ほどしかおらず、ソーシャルディスタンスも十分に保たれており、思ったよりも安心な感じがしました。ホームページによると、上映後は毎回次の観客を入れる前に入念な清掃や消毒を行うことになっていると書かれていましたが、入り口には手指の消毒用アルコールスプレーと共に必要に応じて手すりなどを拭けるように除菌シートも設置されていました。また、ポップコーンやドリンクの販売もキャッシュレスで、こちらも接触を減らすために事前にオンラインでオーダーができるようになっていました。アメリカの映画館ではセルフのドリンクバーが主流でしたが、こちらも感染予防のために閉鎖されており、機械の前に立っている従業員に希望のドリンクを伝えて注いでもらうスタイルとなっていました。予告編と共に上映中も飲食をする時以外は常にマスクを着用するようにと注意喚起する映像が流れるなど1年前とは別世界となっていましたが、コロナ禍でも安心して映画鑑賞ができる環境作りを行っていることが分かります。

ロビーにもほとんど人がいません
ロビーにもほとんど人がいません

今月31日には1年遅れで「ゴジラVSコング」が公開されることから、多くの映画館が今月中の営業再開を目指して準備を進めているようです。この1年間は、「公開延期」「撮影中断」「公開を断念してストリーミング配信」など暗いニュースが多かったハリウッドですが、当面は現在のような感染予防策を講じた上での営業になるものの来月25日にはアカデミー賞授賞式も控えており、ようやく明るい話題が戻ってきそうです。

ポップコーンなどの軽食販売は継続していましたが、ここにもアクリル板が設置されていました
ポップコーンなどの軽食販売は継続していましたが、ここにもアクリル板が設置されていました

(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)