日本では新型コロナウイルスの第7波による医療崩壊が問題になっていますが、ここアメリカではほぼコロナ禍前の日常を取り戻しつつあります。

米疾病対策センター(CDC)は11日、新型コロナウイルスに関する新たなガイドラインを更新し、濃厚接触者の隔離をワクチン接種状況に関わらず不要とすることを発表しました。感染者と接触した人はこれまで、ワクチンの接種状況によって一定期間隔離が求められていましたが、新たなガイドラインではこれを緩和して、最後に接触してから5日間空けて検査を受け、10日間は高機能マスクを着用することを推奨するとしています。

一方で、検査で陽性が確認された人はこれまで通り、少なくとも5日間の自己隔離を行うことが求められています。

日常生活におけるマスク着用など行動制限はすでに撤廃され、日本よりもいち早くコロナ禍前の自由な社会活動を実現させてきたアメリカでは、学校での感染対策も緩和され始めています。ロサンゼルス統一学校区(LAUSD)は15日に新学期を迎え、多くの学校で子供たちが3年ぶりにマスクなしで登校する姿が見られました。

新学期を迎えたLAの学校のニューノーマルを伝えるLAタイムズ紙の記事
新学期を迎えたLAの学校のニューノーマルを伝えるLAタイムズ紙の記事

CDCの新たなガイドランを受け、LAUSDでも学校でのガイドラインを大幅に緩和。昨学期までのマスク着用義務や児童と教職員の定期的な検査を撤廃し、濃厚接触者となった児童の自宅待機も免除されることになりました。これに対して一部の保護者からは、心配の声も上がっているようですが、屋内でのマスク着用を強く推奨するとしているものの、初日は多くの子供たちが久しぶりにマスクなしで授業を楽しんだようです。

パンデミック初期には子供たちにマスク着用を求める看板も見られました
パンデミック初期には子供たちにマスク着用を求める看板も見られました

2020年の感染拡大によって長らくオンライン授業を行ってきたLAUSDは、昨年8月の新学期にはワクチン接種の有無に関係なく全ての生徒と職員にコロナ検査の陰性証明書の提示を求め、その後も定期的な検査を実施してきました。さらに校内では屋内外ともにマスク着用も義務化してきたことから、大きな変化と言えます。

一方で、検査で陽性が判明した場合は学校区に通知した上で、少なくとも5日間の隔離と、その後の検査での陰性証明と症状の改善が求められています。また、学校に復帰した後も、職員は陽性判明から10日後までマスク着用を継続することもガイドラインには盛り込まれていますが、回復した児童には隔離後の登校に際してマスク着用は義務付けていません。また、濃厚接触者となった児童は、症状がない限りは登校を認めるものの10日間のマスク着用が求められています。

学校でのマスクは推奨されるものの、義務ではなくなっています
学校でのマスクは推奨されるものの、義務ではなくなっています

学校での規制が緩和される一方で、コロナに感染した子供が長期間にわたって後遺症を患うケースも増えています。昨年3月に感染したある13歳の少年は、極度の疲労や発熱、喉の痛み、ひどい頭痛に吐き気、肺炎などで長期入院を余儀なくされた後も、めまいや動悸、姿勢起立性頻脈症候群(POTS)、失神などの後遺症と闘ってきたといいます。

小児科学会誌に掲載された最新の研究のよると、感染した子供の主な症状は、疲労、息切れ、咳、頭痛、筋肉の痛み、発熱ですが、コロナまたはそれに関連した炎症性症候群(MIS-C)で入院した子供の4人に1人は数か月間にわたって症状が続くとの報告も出ています。

MIS-Cはコロナに感染した子供に稀に見られる症状ですが、原因は特定されておらず、体の特定の部位に炎症を引き起こし、腎臓や脳、肺、心臓などの主要臓器にも影響を与える可能性があるといいます。これにより、歩行困難になったり、ベッドから起き上がれなくなるほか、授業に集中できない児童も出ているといいます。「子供は重症化しないので心配はいらない」との声もありますが、オミクロン株が流行して以降は重症化したり、長期に渡る後遺症に悩まされる子供が増加傾向にあり、規制緩和には慎重な意見もあるようです。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」)