罹患(りかん)者数が右肩上がりの前立腺がんは、男性のがん罹患者数では最も多くなっている。がんの多くがそうであるように、予防として科学的根拠があるのなら、それはしっかり実践していただきたい。

前回は「禁煙」「1日8000歩」「肥満解消」の3点を挙げました。さらにもう1つ実践すべき予防法があります。それは、「食生活の改善」で、予防3点に引けを取らない大きなポイントと言って過言ではありません。その食の第1点目は-。

まずは、「コーヒーを飲む」ことをお勧めします。その科学的根拠はハーバード公衆衛生大学院の大規模研究。男性4万7911人を対象に行われ、その中から642人が前立腺がんを発症。分析して分かったのは、1日6杯以上のコーヒーを飲む人は、飲まない人と比べて前立腺がんのリスクが18%低かったのです。それだけにとどまらず、悪性度の高い前立腺がんリスクは60%も低かったのです。

コーヒーを1日6杯はきついと思うでしょう。それであれば「1日3杯以上のコーヒーを飲む」ことでOK。これは日本人を対象とした疫学研究でわかりました。

1日3杯以上のコーヒーを飲む人は前立腺がんの発症リスクが約40%も低かったのです。このコーヒーは、できればブラックコーヒーがお勧めです。

今回は前立腺がんの予防にコーヒーが有効であることを取り上げました。さらに、コーヒーは大腸がん、肝臓がん、子宮体がんの予防にも効果のあることがわかっています。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)

◆井手久満(いで・ひさみつ) 1991年宮崎大学医学部卒業。国立がんセンター、UCLAハワードヒューズ研究所、帝京大学等を経て、20年4月から独協医科大学埼玉医療センター教授、低侵襲治療センター長。ロボット支援手術プロクター認定医、日本メンズヘルス医学会理事、日本抗加齢学会理事等。前立腺がん予防や男性ホルモンが研究テーマ。今年9月18~19日、日本メンズヘルス医学会を会長として開催する。

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