頭(かしら)を務める橋本修一さん(左)は樋口杜氏(右)とは新潟清酒学校同期。中央は樋木社長
「鶴の友」の最優秀賞は前任の風間利男杜氏時代、第62回(1996年)以来2度目

 この連載ではこれまで数々の酒蔵の品評会への思いを紹介してきた。春の全国新酒鑑評会(以下、全国)、越後流酒造技術選手権大会、秋の関東信越国税局酒類鑑評会(以下、局)。出品酒は市販酒とは違う特別なものであっても、その目標に向かう過程が蔵人の技術とモチベーションを高めていることは間違いない。

 2016年11月1日、今年で51年目、87回を数える局の表彰式が行われた。春の全国との大きな違いは、新酒ではなく秋まで熟成させた酒を評価することと、優秀賞の中から管内6県それぞれの県総代と、頂点である最優秀賞が決まるということだ。

 今年の最優秀賞は樋木酒造(新潟市)が醸す「鶴の友」に輝いた。杜氏(とうじ)を務めるのは長崎県出身、杜氏になって14年目の樋口宗由(むねよし)さんだ。樋木尚一郎(しょういちろう)社長いわく「とても勉強熱心」な樋口杜氏は、新潟清酒学校卒業生でもあり、常に新しい酒造りを目指し試行錯誤してきた。「3年前から麹(こうじ)のつくり方、使う量を工夫し、新しい吟醸酒に挑戦してきました。今回の評価で新しい吟醸酒の形、方向性を示すことができました。まだまだ伸びしろがあるので磨きをかけていきたい」と意気込む。さらに、挑戦し続けられたのは社長のおかげと語る。「たとえ失敗しても、思ったことをやっていいと言ってもらえたことが今回につながったと感謝しています」。表彰式での樋木社長の受賞あいさつは「人は酒とどのようにつきあうべきか」「酒をなりわいとするものは利潤追求を第一としてはならない」などユニークなものだったが、その根底にあるものは、締めくくりの言葉に集約されていた。「このたびの受賞を励みとし、お客様のためを第一と心がけ、努力してまいります」。

 今回の「鶴の友」の最優秀賞は、新潟県にとっても大きな意義をもつものだった。昨年の造り(平27BY=酒造年度)でデビューから10年目を迎えた県産酒米「越淡麗」での、初の最優秀賞だったからだ。県総代の朝日酒造(長岡市)朝日蔵の「朝日山」や、優秀賞を受賞した複数の蔵でも越淡麗を使用。これまで新潟県酒造組合と新潟県醸造試験場を中心に、栽培研究会や蔵元、すべてが1つになり、情報を公開しながら越淡麗での酒造りに取り組んできた。「その努力を評価してもらえたことがうれしい」と樋口杜氏は喜ぶ。越淡麗の酒をより高めていくこととともに、今後は新潟県産の酵母を使った酒にも注目が集まる。蔵人たちが頂点を目指し切磋琢磨(せっさたくま)していく。その先にあるものは、飲む人の笑顔にほかならない。【高橋真理子】

 ◆関東信越国税局酒類鑑評会 全国的にみても伝統ある銘醸地が多い局管内の6県(茨城、栃木、群馬、埼玉、新潟、長野)で製造される酒類の向上を目的に、1965年(昭40)から開催。第87回は純米酒と吟醸酒の2部制で実施し、205製造場から吟醸酒197点、純米酒182点が出品。吟醸酒では最優秀賞1場、優秀賞59場(うち新潟20場)、純米酒では優秀賞56場(うち新潟18場)を選定。

[2016年11月12日付 日刊スポーツ新潟版掲載]