津南醸造/津南町
地元津南町出身の滝沢昌哉杜氏

 津南醸造の創業は20年前の1996年(平8)。酒米「五百万石」の優良産地である津南町の2つ目の酒蔵として誕生した。

 地元の宝を最大限に生かすため、普通酒の掛米以外はすべて五百万石を使っている。通常は「越淡麗」や「山田錦」を使うことが多い出品酒(大吟醸酒)も例外ではない。それゆえ2013年の越後流酒造技術選手権大会で滝沢昌哉杜氏(とうじ)が手がけた「霧の塔」が首席にあたる県知事賞を受賞したことは業界では驚きの出来事だった。

 滝沢杜氏は津南醸造創業時から蔵人として勤め、名杜氏とうたわれた箕輪弘之氏の指導を受けた後、06年杜氏に。1位から10位までが表彰され、越後杜氏のナンバーワンを決める鑑評会ともいわれるこの大会で首席になり、滝沢杜氏自身最初は信じられなかったという。「受賞してみて初めて、他の杜氏さんたちの鑑評会への思いの強さを実感しました」。

 滝沢さんが杜氏になって最初に手がけた新商品が今回の1本『霧の塔 純米吟醸』だ。「やはり思い入れがありますね」。酒米はもちろんオール津南産五百万石。清らかな雪解け水に恵まれた河岸段丘の台地で、顔の見える生産者たちが誇りを持って栽培している。

 年明けの極寒の時期に仕込み始め、低温でじっくり時間をかけて発酵させることできれいな味わいが生まれる。3月中旬に搾ってから、半地下の貯蔵庫で1年間熟成させ、4月に瓶詰めし出荷。冬季は雪に覆われる雪室のような環境で熟成させることで、まろやかでやわらかい口当たりになる。津南の地の利が凝縮されたこの1本は、香りが穏やかですっきりとした、食中酒として楽しめる純米吟醸酒だ。

 純米吟醸の精米歩合は50%。五百万石は山田錦や越淡麗より高精米には向いていないため割れやすい。出品酒を含む高級酒ならなおさらこのリスクが伴うため、割れてしまった場合にそれをカバーして目指す味に持っていく技術も必要だ。「酒造りは毎年が1年生」。師である箕輪杜氏から受け継ぐこの言葉を大切に、滝沢杜氏は挑戦し続ける。今年の越後流酒造技術選手権大会の結果は4月下旬に発表される。

[2016年4月2日付 日刊スポーツ新潟版掲載]