最終戦をホームランで締めくくったエンゼルス大谷翔平投手だが、タイトルまで2本、届かなかった。

正直、中盤戦まではタイトルを取れると感じていただけに残念だが、今季の大谷を見るまでは「日本人がメジャーで本塁打のタイトルを獲得する」なんて夢にも思わなかった。しかも投手と打者の“二刀流”で、だ。想像を絶する領域を飛び越え、その先にある領域までをも突き抜ける活躍だった。

全46本塁打を動画でチェックした。昨年との違いを探すと、まず驚いたのは体つきの変化だった。巨漢がそろう大リーガーに囲まれて気が付かなかったが、昨年と比べると明らかに体が分厚くなっていた。それだけでもビックリしたが、打者の技術も驚くべきほど、レベルアップしていた。

昨年までも広角に本塁打を打つ技術は持っていた。しかし、ホームランバッターとして見た場合、それが“物足りなさ”に感じていた。逆方向に流し打って1発にする技術は見事だが、ホームランバッターと呼ばれる打者は“引っ張る技術”が卓越している。

昨年までは外角球はもちろん、内角球までもバックスクリーン左から左翼ポール際まで本塁打にしていた。これだけでも桁外れのパワーと広角に打つ技術がなければ不可能だが、どちらかというと「引っ張って打球を上げる技術」に欠点があった。特に内角球に対して、体を回転させて打つタイプではなく、右ヒジを抜くようにインパクトすることが多かった。これも素晴らしい技術ではあるのだが、あまり体を回さずに打つため、引っ張った打球がゴロになる確率が高かった。この点がホームランバッターとして見たときの“物足りなさ”だった。

しかし、今季は内角球に対して体の回転で打てるようになった。昨年までは打ち終わりのフィニッシュで、グリップが肩のラインより高く上がり、左手を離すことが多かったが、今年はフィニッシュでもグリップの位置が肩のラインぐらいに収まっていた。インパクト後に高い位置に流れそうなときでも、押さえ込むように我慢していた。しっかりと体を回転させて打つことでバットのヘッドが返るのを防ぎ、引っ張ってもゴロになりにくく、打球が上がりやすいスイング軌道を実践していた。

内角の難しい球を右翼席に弾丸ライナーで突き刺した15号は、成長した大谷を象徴する1発だった。

誰かにアドバイスされたのか、自分で考えて実践したのか分からない。たとえ、理想のスイングを頭の中で理解したとしても、試合で実践できるまでにはある程度の時間がかかる。昨年まではできていなかった技術をオフの期間だけで修正し、今季は試合の中で実践するのだから、常識では測れない身体能力をあらためて証明したとしか考えられないだろう。

後半戦、本塁打数でトップを譲ってからは強引なスイングが目についた。外角低めのボールゾーンにくる変化球に対し、無理やり引っ張ってホームランにしようとする打席が多くなった。「大谷もさすがに人の子だなぁ」と感じていたが、終盤は手を出さないようになっていた。極端に四球が多くなったのは、その影響で間違いない。

相手もボール球を振ってくれればストライクゾーンに投げる必要はないが、振らずに我慢できるようになれば話は違う。今季は四球が多くなったところで公式戦は終わってしまったが、このスタイルでいけば来季は再びストライクゾーンで勝負する確率は上がると思う。日本人初のホームランキングの夢は、来季に向けて大きく膨らんでいる。(日刊スポーツ評論家)

マリナーズ対エンゼルス 1回表エンゼルス無死、右越えに先制の46号本塁打を放つエンゼルス大谷(撮影・菅敏)
マリナーズ対エンゼルス 1回表エンゼルス無死、右越えに先制の46号本塁打を放つエンゼルス大谷(撮影・菅敏)