優勝争いで首位に立った阪神だが、今試合の先発はプロ入り初登板となる下村だった。負けられない試合が続いているが、23年のドラフト1位投手がいいピッチングをすれば、今後の展開はグッと有利になる。どんなピッチングをするか、楽しみに見ていた。

初球は151キロの真っすぐが外角に決まってストライク。回転のいいきれいな真っすぐだったが、高めで勝負するパワーピッチャーというより、変化球を織り交ぜながら低めで勝負した方が持ち味が生きるタイプ。オーソドックスな先発型の投手だろう。

素晴らしかったのはマウンドでの振る舞いで、表情を変えず、デビュー戦とは思えないマウンド姿だった。真っすぐも変化球も抜ける球がチョコチョコとあったが、デビュー戦という緊張もあっただろう。フィールディングもよさそう。球威もコントロールもまずまずで、まとまっている投手だった。

一番の課題はスタミナだが、プロ入り1年目でトミー・ジョン手術をして3年目のデビュー戦。仕方ないだろう。それよりクイックモーションを苦手にしている印象があった。盗塁を警戒する場面ではクイックしていたが、足を上げていたし、高めに抜け気味になる球が見受けられた。

走者がいても、盗塁の心配がないときは少しゆっくりめに投げていた。しっかり投げたいという意識はいいのだが、これだとヒットを打たれたときに走者がスタートを切りやすく、先の塁を狙いやすくなる。野球センスはありそうで、練習すればすぐにうまくなりそうなだけに、しっかりクイックで投げる練習を積んでほしい。

ベンチの期待も大きいのだろう。5回に同点に追いつかれ、1死二、三塁から死球を与えた時点で交代かと思っていた。しかし藤川監督は投手出身で、経験を積ませて大きく育てたかったのだろう。私も大賛成で、仮にここで交代させるなら、優勝争いの中で先発をさせなくてもいい。満塁からノースリーとなったが、村松を空振り三振に抑え、細川もライトフライに打ち取った。大きな自信になったと思う。

ただしデビュー戦ということを差し引いても、現時点で優勝争いの“切り札”になると思えない。とはいえ、まだ手術明けの年でもあり、ローテーションの谷間に投げさせていくレベルには達している。決め球になる変化球を磨き、じっくりと育てていけばチームにプラスアルファを与える投手にはなりそうだ。次回の登板も楽しみにしている。(日刊スポーツ評論家)

阪神対中日 5回を投げ終えた下村海翔(右)はベンチ前で森下翔太とタッチをかわす(撮影・上山淳一)
阪神対中日 5回を投げ終えた下村海翔(右)はベンチ前で森下翔太とタッチをかわす(撮影・上山淳一)