<エンゼルス5-6マリナーズ>◇20日(日本時間21日)◇エンゼルスタジアム

マリナーズ菊池雄星投手(27)がエンゼルス戦に先発し、5回10安打4失点でメジャー初勝利を挙げた。

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菊池の胸に刻まれた、父からの言葉がある。花巻東3年の09年冬。それまで進路については何も言わなかった雄治さんが、ふと言った。

「アメリカに行ってほしかった。マイナーで5年くらいやって、メジャーを目指してほしかった。日本ではどうしても注目が集まる。もし結果が出なかった時、お前がたたかれるところは見たくない」

日本球界を選んだ息子の決断を批判しているわけではないことは、もちろん分かっていた。純粋に自分の身を案じて出た言葉。親心を痛いほど感じたからこそ、ずっと心に残る。

西武入り後、雄治さんは毎年、地元盛岡で100人規模の応援ツアーを企画。スタンドから声をからして息子の背中を押し続けてくれた。そんな父の思いも背負って立つメジャーのマウンド。日本では決して逆境に強い方ではなかった。鳴り物入りで海を渡り、今後メディアなどからたたかれる日もあるかもしれない。それでも今の菊池なら、10年前のように雄治さんが案じることはないだろう。苦しみながらも、何とか踏ん張ったこの日の97球。6戦目で手にした1勝目は、そんな力強さを感じさせた。【佐竹実】