練習の鬼!? それとも…阪神ドラフト1位の佐藤輝明内野手(21=近大)は、プロの世界に入っても全くブレていない。

沖縄・宜野座で行われている1軍キャンプ。コロナ禍で取材制限があり、選手たちを取材するのは練習を引き揚げて宿舎へ向かう帰りのバスに乗り込む直前になる。練習が終わる順にいうと助っ人陣、投手陣、野手陣と引き揚げるのだが、その中でも佐藤輝は新人野手とはいえ、なかなか報道陣の前に姿を見せてくれない。原稿の締め切り時間が迫る日もある中で、西日が完全に落ちていることもしばしばあった。

もちろん理由は、多くの練習をこなしているからに他ならないのだが、佐藤輝の場合は別にもあった。チーム関係者の多くは「輝は練習の合間、合間が長いんです」と明かす。マイペースの鬼なのだ。例えば個人練習のウエートトレーニングでも、しっかり自分の間合いで課されたメニューをこなしている。

この佐藤輝のマイペースぶりは、近大野球部の恩師、田中監督も心配していた一面だった。しかし、プロの世界に入っても自分のペースを乱さない姿には大物感を感じる。チームの全体練習中でもそれは見受けられる。野手は1組3人前後で順番にフリー打撃を行い、待機組は打撃ケージの裏でバックネット方向に向かってティー打撃に取り組む。佐藤輝はここで、周囲の選手より平均的にスイング数が少ない。決してサボっているわけではない。

コーチらにボールをトスしてもらうトス打撃ではなく、ルーティンとする「置きティー」をメインに自分のペースで1スイングに時間をかける。視線をマウンド方向に向けてバットを構え、投手をイメージ。スイング軌道を確認するように1球、1球じっくりと振る。時には手を止め、隣で打つ先輩選手のスイングを凝視。何か吸収できることはないかと目を凝らす。決して休んでいるわけではない。

周りの環境に左右されない「良い意味でのマイペース」。豪快な打撃などとは違って目には見えないが、これもまた佐藤輝の大きな武器の1つだ。【阪神担当 奥田隼人】