11年ドラフト以来、広島は4選手を育成で指名した。その中に、特種球を武器とする未完の大器がいた。育成4位の中部学院大・坂田怜投手(22=正智深谷)。188センチ、90キロの恵まれた体格から投球の8割がナックルボールという、現在のプロ野球界では1人もいないフルタイムナックルボーラーだ。

昨春に開胸手術で胸骨を切った影響から上半身の柔軟性を生かした動きができず、ナックルボーラーに転身した。試行錯誤の日々を見つめていたのが、広島松本スカウトだった。「投げるたびにコントロールが良くなり、落差も出てきた。あれだけ背が高いので、角度もある。プロで野球漬けの日々で、もっと良くなると思う」。ひそかにナックルボーラー育成を思い描いていた広島球団の目に留まった。

ナックルボーラーといえば、広島には07年にジャレッド・フェルナンデスがいた。30試合(先発11試合)に登板して、3勝8敗2ホールド、防御率6・04。好成績は残せていないが、ファンに強烈なインパクトを残した。“揺れるタマ”にかけて「赤いふんどし」が球団から発売された。肩に負担がないといわれるナックルボーラーの利点を生かして連投あり、中3日で先発ありと、1年の在籍で広島ファンの記憶に刻まれた助っ人の1人となった。

広島はまさに、記憶に残る選手を育てようとしているのかもしれない。坂田本人も「挑戦することは好き。“ナックルボーラーは日本で成功しない”とよく言われますが、覆せるようにやっていきたい」と瞳を輝かせる。ロマンあふれるフルタイムナックルボーラーが、プロ野球界の扉をたたく。【広島担当 前原淳】