広島のレギュラーシーズン最終戦となった1日阪神戦は、一岡竜司投手(32)の引退試合となった。登板した6回。大きな声援を背に、8球すべて真っすぐ勝負で見逃し三振を奪った。現役最後の投球を終えると、新井監督にうながされるようにマウンドに残り、ともに3連覇に貢献した中崎に白球を託した。
「ザキ(中崎)にボールを渡すときと(試合後セレモニーでの花束贈呈の大瀬良)大地のはグッとくるものがありました」
通算290試合はすべて、中継ぎとして登板した。抑えた喜びよりも、打たれた1球が強く胸に刻まれる酷な役割をまっとうできたのは、仲間の存在が大きかった。
一岡にとって、最終登板の前にやるべきことがあった。ブルペンでの投球練習。通常なら10球前後で終える球数を“16”球に増やしたのだ。
「まさか僕がこんな盛大に送り出してもらえるとは思わなかった。本当にありがたい。だから、猛の分もと思ったんです」
球数は、21年限りで現役を引退した今村猛の背番号を意味していた。
一岡とともに3連覇に貢献するなど通算431試合に登板した今村は、21年シーズン終盤に戦力外通告を受けた。当初はまだ現役続行の可能性を残していたこともあり、引退登板もセレモニーも用意されなかった。オフに入ってから引退を決した仲間の思いとともに、一岡は最後のマウンドに上がりたかったのだ。
試合前から新井監督に一岡からバトンを受けることを告げられていた中崎も、自然と続いた。「一岡さんを見ていたら“16”球投げていたので、僕も」と、通常の球数よりも多い“16”球を投げ、一岡が待つマウンドに向かった。
勝つ喜びだけでなく、打たれた悔しさ、ケガした苦しみなど、さまざまな感情や多くの時間を共有してきた。口数が多いタイプではない3人はときに、言葉を必要としない。一岡の最終登板に涙した今村は後日、2人の思いを伝え聞くと、また泣いた。10月1日阪神戦は一岡だけでなく、今村の引退試合でもあったのかもしれない。【広島担当 前原淳】




