日刊スポーツ評論家の田村藤夫氏(61)が10日間の甲子園取材を終えた。16試合(うち降雨コールド1試合)を見て、高校野球における重盗の現状を分析した。
◇ ◇ ◇
甲子園大会を5日間見ることができた。ノーゲームとなった12日のノースアジア大明桜(秋田)-帯広農(北北海道)は再試合となったが、17日の大阪桐蔭-東海大菅生(西東京)は8回途中で降雨コールド。異例の結末に、天候に左右された選手は本当に気の毒だった。
初めて甲子園大会を生で取材し、意外に感じたことも数多くあった。とりわけ捕手出身の私は、走者一、三塁での重盗に着目した。
10日の東明館(佐賀)-日本航空(山梨)では日本航空が6回に、16日の専大松戸(千葉)-明豊(大分)では専大松戸が初回に、それぞれ一、三塁から重盗を成功させている。どちらもショートが二塁ベース手前で捕手の送球をカットして本塁に返球するも得点を許している。
一方、16日の阿南光(徳島)-沖縄尚学では、沖縄尚学が2回裏2死一、三塁で一塁走者が盗塁を仕掛けたが、ここでは捕手は二塁に送球しなかった。三塁走者はスタートせず二、三塁とはなったが、結果として、この後の失点は防いだ。
興味深かったのは17日の大阪桐蔭-東海大菅生。大阪桐蔭1点リードの2回裏2死一、三塁。ここで東海大菅生の捕手福原がどういう対応をするか注目していたが、内野陣にサインで指示はしなかった。結局、次打者の時に大阪桐蔭は重盗を試みなかったが、守備側に特別なサインが出ていなかったのは意外だった。
私の理解では、こうした状況で一塁走者がスタートした時、捕手はほとんどのケースでは二塁に送球する。ショートが二塁ベースよりも前に入り、三塁走者のスタートを警戒し、スタートした時は送球をカットして本塁へ送球。そういう対処だと感じた。
高校野球を取材しながら、プロ野球と比較することには多少の違和感を覚えるが、1つの参考までにプロの対策を紹介したい。プロではアウトカウントに関係なく一、三塁の時には必ず捕手が重盗防止のサインを出す。
(1)セカンドスロー(一塁走者の二盗阻止が目的)
(2)サードスロー(捕手が捕球後に二塁送球のモーションを入れてから三塁へ送球。本盗狙いの三塁走者を刺すことが目的)
(3)ピッチャーカット(二塁送球を投手がカットし三塁走者の挟殺プレー狙い)
(4)捕手のノースロー(二盗はさせるが三塁走者のスタートは切らせない)
この4パターンを確認して、捕手は投球を受けてからどこに投げるのか、もしくは投げないのかをサインで徹底しておく。
プロ野球での一、三塁での重盗は、シーズンでも1度あるか、ないかのレアケースになる。ここぞの場面でやる作戦で、シーズンの序盤にやれば、もうその年は同じチーム相手にはやりづらくなる。一方で、やられた相手からすると、警戒するあまり二塁に投げづらくなり、二盗しやすいという傾向が出てくる。高校野球でも、対戦校が研究してくれば、二盗はしやすくなる可能性はある。
日本航空と専大松戸のケースでは、ショートが二塁ベース前でカットしたが、それでもセーフになっている。これは、三塁走者のスタートの良さとスライディングの技術がある。三塁走者は、捕手が二塁に送球した瞬間にスタートを切るのだが、どちらもこの判断にレベルの高さを感じた。
大会は、ここから佳境を迎えていく。走者一、三塁のケースは何度も出てくるだろう。高校野球ファンの方も、重盗があるかどうかを読みながら見ると、勝負の醍醐味(だいごみ)を、より楽しめると思う。
最後に、この大会で見た内野手では、いずれもショートの日本航空・久次米陸士(3年)、智弁学園(奈良)・岡島光星(3年)、神戸国際大付(兵庫)・山里宝(2年)が打球判断、捕球、送球という点で印象に残った。
今年の甲子園は、雨でぬかるんだイメージが強いとは思うが、素晴らしい整備が行き届いたグラウンドだと再確認した。雨が上がった後、見事なまでに水が引き、阪神園芸のスタッフが手際良く整備していく様を見た。この舞台で、選手が余すところなく全力を出し切り、勝っても負けても、戦い抜いたと言える試合を期待したい。(この項終わり)




