島から甲子園へ-。鹿児島・徳之島にある徳之島高は、離島のハンディをものともせずに夢を追いかける。昨秋の県大会では20年ぶりに4強入りする快進撃。約15時間に及ぶフェリー移動など苦難を乗り越えて「徳高(とっこう)旋風」を起こした。夏の甲子園に沖縄を除く九州地区の離島の学校が出場した例は過去にない。センバツに出場した22年の大島(鹿児島)、25年の壱岐(長崎)のように、マネジャーを含めた部員20人で聖地への扉を開く。
★「島から甲子園」
高台に位置する徳之島高のグラウンド。右翼にある石垣の上には島の基幹作物のサトウキビが所狭しと生い茂る。まるでトウモロコシ畑を切り開いて球場をつくった、映画「フィールド・オブ・ドリームス」を想起させる。そんな自然豊かな場所からマネジャーを含めた20人が「島から甲子園」を合言葉に夢を追う。
昨秋の県大会では「徳高旋風」を起こした。あれよあれよと勝ち進み、20年ぶりに4強入りした。準決勝では出水中央に7-8で惜敗。決勝進出、九州大会出場にあと1歩届かなかったが、島育ちのナインが結束して4勝を挙げた。就任4年目の地頭所(じとうしょ)眞人監督(32)は言う。
「目標は優勝だったんですよ。秋。九州大会に行って春のセンバツに出ることを選手たちは口にしていたんで、結果としては残念って感じですかね。ただ、今まで行ったことない、見たことない世界だったんで。準決勝も大敗とかじゃなくて、あとアウト2つ取っておけば勝てたような試合だったので、俺たちはやっぱやれるっていう感覚はあります」
県大会で好成績を残したことなどが評価され、今春センバツの21世紀枠県推薦校にも選出された。「取り組み方とか野球に向き合う姿勢とか、地域での貢献度とかも総合的に評価していただいたと思う。僕はそっちがうれしいですね」。九州地区推薦校には選ばれず、21世紀枠の候補校から外れたが、聖地にあと少しのところまで迫った。
★経済的負担考慮
徳之島高は公式戦に臨むまでも苦労がある。鹿児島本土までの距離は約500キロ。飛行機なら1時間ほどで移動できるが「(交通費が)倍以上かかるんで」と経済的負担を考慮し、基本的にはフェリーを利用する。「船移動も徳之島から鹿児島間が15時間かかるんですよ。(昨秋の)県大会の時は台風の影響で船が出なくて、結局プラス2泊して合計18泊したんです。ホテルに」。県内での試合も遠征となる。
本土で公式戦に出場する際は試合の前々日に出発し、到着するのは前日の朝方。「自分たちはもう日中はずっと鹿児島にいるんで、自分の知り合いの先生とかにグラウンドを貸してくださいと」。いろいろなつてをたどって練習場所を確保。「ほんとにありがたいです」。鹿児島市内の学校が授業中の時間帯にグラウンドやボールを借りて調整することが多いという。
いざ翌日に試合を迎えるが、その後の動きも読みづらい部分がある。「勝敗次第で帰るか、残るかみたいなのが決まったりするので。自分は監督なんで、選手たちの試合に向けてやればいいんですけど、部長先生が船やホテルの段取りとか、いろいろ大変だと思います」と、おもんぱかった。
★1人=2万5000円
試合のない冬場は選手たちがアルバイトをして遠征費を捻出する。今回は「1人2万5000円」をノルマに設定。個々が地元のスーパーで品出しを行うなどして3月以降の遠征で使う資金を調達する。「波が高くて船が出ないとかなった時は急きょ、飛行機に切り替えないといけなかったりして、絶対お金がかかってくるので。2万5000円だけは集めて部として預からせてねと」。離島だからこその事情もある。
★ジャガイモ収穫
春には「部の公式行事」がある。島内で生産量の多いジャガイモ収穫のアルバイトに尽力する。「機械で掘り起こして回収する作業がめちゃくちゃ労力かかるんですよ。そこの人手、労働力として高校生がジャガイモ畑に行って、大きさごとに仕分けしたりします。『徳之島に応援されるチームになろうね』と常々言っていて、社会経験を培うのも勉強だよってやってます」と狙いを明かす。
離島というハンディはあるが、マイナスには捉えていない。
「もちろん、お金、時間、労力とかはものすごくかかるんですけど、みんなでホテルに泊まって、一緒に起きて、散歩して、ご飯食べて、練習行ってみたいな。ずっとこの子たちのことを見ることができるので。意外とチームづくりとしてはまとめやすいのかなと。結局、捉え方次第ですけど、僕は(就任)4年目になって、これってうちの武器だよなと感じ始めているところですね」
一体感はどの強豪校にも負けない自負がある。
【山田愛斗】(つづく)










