WBC1次ラウンドC組で、日本は初戦で台湾と対戦する。24年秋のプレミア12決勝で敗れただけに、同組でもっとも手ごわい相手とも言われる。いったいどんなチームなのか。政府系ラジオ局「台湾国際放送」で日本語番組パーソナリティーを務める駒田英さんに、台湾内の盛り上がりとあわせて聞いた。【取材・構成=古川真弥】

★WBC予選決定戦までもつれ本戦へ

今、台湾では「WBCフィーバー」が起きています。1年ぐらい前から、とりあえず日本行きの飛行機とホテルを抑える人が大勢現れました。ところが、日本戦のチケットが全然取れない。3月6日、東京にはいるのに試合は観に行けない人が増えてしまった。そこでCPBL(中華職業棒球大連盟)のコミッショナーが動き、外交の窓口機関や台湾華僑とも協力し、パブリックビューイング(PV)を開催することになりました。都内で3カ所、施設を確保し、経費は有志がクラウドファンディングを呼びかけました。それでも入場料は1万円を超しましたが、販売開始から20分ほどで計5000席が完売しました。

24年11月、プレミア12決勝で日本に勝利し優勝を決め歓喜する台湾ナイン
24年11月、プレミア12決勝で日本に勝利し優勝を決め歓喜する台湾ナイン

台湾内でもPVが準備されています。盛り上がりの背景には、やはり24年秋のプレミア12優勝があります。低い下馬評から映画のような展開で勝ち上がり、主要大会初優勝。選手たちを乗せた飛行機に最後、空軍のF16戦闘機が並走し、大勢が凱旋(がいせん)を出迎えました。25年2月のWBC予選は決定戦までもつれましたが、スペインに勝ち本戦出場。高まった野球人気が続いています。昨季はプロ化36年目でついに観客動員が平均1万人超え。日本と比べれば大した数ではないかもしれませんが、八百長などで低迷した時期は1000人台もざらでした。それを思うと、にわかには信じられない数です。

★投手 他チームより多い16人

他チームよりも多い16人をそろえました。台湾の有望な若手は高校を卒業したらすぐアメリカや日本に渡る傾向があります。特にアメリカの球団は、大会の球数制限とは別に所属チームの制約がかかるケースが多く、それで、多めに登録されました。

ソフトバンク徐若熙
ソフトバンク徐若熙

先発の軸は、古林睿煬、徐若熙の日本でプレーする2人。そこに米マイナー組が加わります。林■□(■は日の下に立、□は王ヘンに民)はプレミア12決勝で日本を4回無失点に抑えた左腕。荘陳仲敖はアスレチックス傘下から40人枠に入りました。同じくア軍傘下で、奪三振率が高く直球の回転数が多い林維恩、パイレーツ傘下の陳柏毓らが先発の中心でしょう。

全体的に若いですが、日本のロッテでもプレーした35歳の陳冠宇が曽豪駒監督の強い要請を受け、再び代表入りしました。貴重な左のリリーフ。3度目のWBCでも頼もしい存在になるでしょう。

★野手 目玉は米国出身の2人

相手にもよりますが、予想オーダーを挙げます。

1番中堅 フェアチャイルド

2番DH ロング

3番右翼 林安可

4番一塁 張育成

5番二塁 李■宇(■はサンズイに景頁のつくり)

6番三塁 呉念庭

7番左翼 陳傑憲

8番捕手 林家正

9番遊撃 鄭宗哲

目玉は米国出身で台湾にルーツを持つ2人です。フェアチャイルドはメジャー通算18本塁。足もあり、中堅守備も期待です。ロングは昨季3A20本塁打。1、2番に並べました。

元西武の呉念庭
元西武の呉念庭

3番は西武に入った林安可。4番には台湾人のメジャー記録をいろいろと持つ張育成。元西武の呉念庭は6番にしましたが、5番でもいい。昨季は魚雷バットで首位打者の活躍でした。その呉念庭と岡山共生高で一緒だった陳傑憲は7番に。代表キャプテンも務めるムードメーカーです。

林家正は米マイナーの経験が長く、NPBの練習にも参加してきました。海外の野球を早くから経験し、嗅覚にたけます。データだけではない、感性も使って抑えられるキャッチャーです。

「吉力吉撈鞏冠」の表記で話題になったギリギラウもDH候補。控えにした選手にも実力者が多く、遜色ありません。いろいろなパターンが考えられます。

台湾人は、勢いに乗ると止まらない気質があります。初戦のオーストラリア戦に勝って、勢いを付けて日本に当たりたい。もちろん、選手の本能では勝ちたいですが、本音では勝てなくても、その後のチェコ、そして韓国に勝つ。そのためには、日本戦でいかに投手を消費しないかがカギになりそうです。軸に挙げた古林睿煬、徐若熙は日本戦以外にぶつけるのではないでしょうか。

ご存じの通り、台湾は国際社会で微妙な立場にあります。「チャイニーズ・タイペイ」の名称での出場ですが、WBCは世界に台湾をアピールできる機会。プレミア12が盛り上がったもう1つの背景でもあります。8強入りして米国まで行けば、野球人気がさらに高まるのは間違いありません。

◆駒田英(こまだ・えい)1976年(昭51)、東京都生まれ。大学卒業後、一般企業に就職も、台湾及び台湾野球への関心の高まりから留学。大学院卒業後の11年、政府系国際放送の日本語番組パーソナリティに。以降、台湾プロ野球のほか、WBC、プレミア12、アンダー世代含め各種国際大会を取材。「台湾プロ野球<CPBL>観戦ガイド&選手名鑑」にも執筆者として参加している。

台湾代表メンバー
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