存在感を増しつつあるプロバスケットボール男子のBリーグは、「B.革新」と称し、今秋から新たなステージに入る。競技成績による昇降格を廃止し、売上高、観客動員数、アリーナの整備状況によって、3つのカテゴリーに分けた。トップカテゴリーであるBプレミアは26チームでスタートする。斬新な仕組みを打ち出したBリーグの島田慎二チェアマン(55)を直撃した。【取材・構成=沢田啓太郎】
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Bリーグが今秋から採用するカテゴリー分けの条件を耳にした時、長らくプロ野球を取材してきた私はとても新鮮に感じた。
プロ野球球団は、現在こそ広い意味での「独立採算」が主流だが、長年「親会社が赤字をサポートする」のが当たり前だった。今でも「広告宣伝」の意味合いで、親会社から資金提供を受けている球団はある。リーグ優勝し、日本一にもなれば、観客数もメディアでの露出も増え、十分に「おつり」が来る。
しかしBリーグは、成績よりも稼ぐ力、クラブの経営力をまず重視する姿勢を打ち出した。その理由について、島田チェアマン(C)に聞いた。
島田C 私たちは個々のクラブがその地域にとって必要不可欠な存在になることを目指しています。あらゆる努力を行い、ファンを獲得し、シビックプライド(住民としての誇り)を育み、地域経済の活性化に寄与する。例えるならば神社仏閣です。地域の文化になるには、勝った負けただけのアプローチでは足りません。目指す地点に確実にたどり着き、確実に持続可能な体制をつくるための仕組みです。
稼いだお金を戦力補強に充てるだけではなく、地域への貢献にバランス良く回す。地域活性化に寄与し、地域から熱心に応援される存在になれば、競技成績も売り上げも伸びていく。この好循環をつくろうという仕組みが「B.革新」にほかならない。
プロ野球とは全く異なる環境が、斬新な発想の根底にある。
島田C プロ野球ならば(1軍)12球団という希少性を生かしてマーケットを拡大していくでしょうが、私がBリーグを担う立場になったとき、すでに55チームありました。55チームすべてをハッピーにするには何がベストかを考えました。
みんなで幸せになるのがBリーグの基本精神。島田Cを中心に各クラブの経営層が定期的に集まり、勉強会や事業報告会を開いている。なかには「企業秘密」もあると思われるが、それすら共有して生かしていこうという考えだ。一方で、「稼ぐ力」が基準に満たなければ、下のカテゴリーへの降格もある。競技成績とは違う重圧が、クラブにはかかる。
島田C 私たちは小粒。束になってかからないと、マーケットにインパクトを与えることができません。みんなで大きくなっていく方がいいよね、という共通理念は一致しています。
2019年以降、バンダイナムコやジャパネットたかた、セガサミー、タイミーらの企業が次々にBリーグのクラブに投資している。そこはプロ野球がヒントになったという。
島田C ソフトバンクさんやDeNAさんが参入して、NPB発展を加速させるエンジンになった。ビッグカンパニーからも投資を呼び込めるマーケットにしないといけない。私たちは後発だからこそ、プロ野球やJリーグといった先輩たちに学んで成長しないといけないと思っています。
エクスパンション型(球団拡張)の興行体制は、プロ野球や米国プロスポーツから学び、地域を巻き込む理念や方法はJリーグから学んでいるようにみえる。先輩たちの良いところを取り入れつつ、新しいものを生み出そうしている。
島田C 今は東京からバーンと発信する時代ではないと思います。全国にいっぱい拠点がある方がおもしろい。すでに地域の文化になっている琉球(ゴールデンキングス)や宇都宮(ブレックス)のようなクラブが全国に20、30あるとすごいことになると思います。
そのためにも島田Cはある構想を持っている。子供から大人まで、日本のバスケットボールに関わった人たちすべてをデータ化することだ。IDを利用してさまざまな施策を打つことが可能になる。
若年層の競技人口動態も追い風だ。野球やサッカーは年々減少しているが、バスケは横ばいで、相対的にボリュームは増している。23年に笹川スポーツ財団が発表したデータによれば、年1回以上バスケをやった10代人口は267万人(男子165万人、女子101万人)、同じく年1回以上、野球をやった人口は174万人(男子148万人、女子25万人)。100万人近く、バスケが優勢となっている。
島田C 野球も素晴らしいですし、おもしろいですが、バスケは競技としてもエンタメとしても楽しむことができます。2050年には、メディアへの露出も含めてプロ野球やJリーグと肩を並べるのが1つの目標です。
Bプレミア仕様の新アリーナが全国各地に続々と誕生するなど、確実にムーブメントは起きている。日の出の勢いのBリーグを、プロ野球界はどう見ているのだろうか。(つづく)
◆島田慎二(しまだ・しんじ)1970年(昭45)11月5日、新潟県生まれ。日大卒業後、旅行会社勤務を経て95年に旅行会社を設立。12年に当時bjリーグの千葉ジェッツ社長に就任。リーグ有数の人気クラブへと成長させた。17年9月から翌年3月にかけては、千葉社長とBリーグ副チェアマンを兼任。20年6月にBリーグ第3代チェアマンに就任した。25年9月から日本協会の会長も兼任している。
<「B.革新」おもな骨子>
◆ビジョン 経営、強化、社会性を軸に、地域と日本を元気にする存在に。「世界一型破りなライブスポーツエンタメ」を目指す。
◆カテゴリー プレミア、ワン、ネクストの3つに再編。プレミアの審査基準は1試合平均入場者数4000人以上、シーズン売り上げ12億円以上、ホームアリーナ基準5000席、VIPルームの確保など。
◆サラリーキャップ制 健全経営と戦力均衡のため選手報酬等の総額を規制。プレミアは上限8億円、下限5億円。
◆オンザコート 外国籍選手の同時出場制限(今季は同時に2人まで。帰化・アジア枠は除く)を撤廃。登録数は1チーム3人(帰化・アジア枠は1人)までと従来通り。
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◆Bリーグ1部・チャンピオンシップ決勝(全3戦、2戦先勝方式)
長崎ヴェルカ(西地区1位)VS琉球ゴールデンキングス(ワイルドカード2位)
◆日時 第1戦・5月23日(午後2時30分)第2戦・24日(午後1時5分)第3戦・26日(午後7時5分)
◆会場 横浜アリーナ
◆放送 第1戦・日本テレビ系、NHK・BS 第2戦・NHK総合 第3戦・NHK・BS
◆そのほか放送・配信 バスケットLIVE、プライムビデオ、UーNEXT、DAZNで全戦配信。JスポーツとJスポーツオンデマンド(一部録画放送・配信の可能性あり)




