中越えに140メートル弾を放った江越(撮影・加藤哉)
中越えに140メートル弾を放った江越(撮影・加藤哉)

新井サンが宜野座に来た。昨季限りで現役引退した新井貴浩。広島から阪神、そして広島で有終の美を飾った。若い頃を知る身としては今年から東京キー局の解説者としてテレビ出演しているのは驚きに近い感覚だ。2000安打を達成した名選手だが、なぜか、そう思わせないのがこの人のいいところ。弁舌もさわやかで、あんなにしゃべれたかな、と思ったりする。

それはともかく。新井といえば背番号25の印象。現在、阪神でそれを背負うのは5年目を迎える江越大賀だ。新井と同じ駒大出身で同じ右のパワー・ヒッター。名前も「タイガー」と、入団時は長距離砲としての期待も大きかった。16年には4試合連続弾も放ったが、そこからの輝きは少々、鈍っている。

なので今年の1軍キャンプ参加はどうか、と思っていた。だが昨季、ファームで指揮を執った指揮官・矢野燿大、2軍打撃コーチだった浜中治が1軍同コーチとなったこともあってか、1軍で見極められる日々を送っている。大卒であることを考えればそろそろ勝負の年だ。どんな気構えか。予想に反し、というのも妙だが表情は明るかった。

「自主トレ中から打撃の調子がいいんで。これまでと違うのは善しあしが自分で分かるようになったことですかね。体が開いているな、とか頭が残ってるとかいうのが自分で分かる。前はなんでかな、と思っていましたけど」

さらにスポーツ好きの我々、一般人にとっても面白いことを話した。打撃のコツをゴルフに例えるのだ。ゴルフ好きの江越はオフの練習の合間にはクラブを握ることも多かった。そこで1W、ドライバーを振っているときに「それ」を感じたという。

「ドライバーって力任せじゃなく、ゆっくりと振った方が当たるし、飛ぶ感覚がしますよね。もちろん野球とは違うんですけど、それがバットスイングにも通じるものがあるな、と思って」

プロ選手がバットを「ゆっくり振る」というのが、どういう感覚なのか、こちらには正直、分からない。ゴルフと違い、野球は投手が投げる球を打つという大きな違いもある。それでもこの日の江越が進境著しい浜地真澄から右方向に運ぶのを見て、自分の感覚をキープできているのでは、と想像している。

「パワーもあるしね。練習ではいい。1軍での実戦対応。それだけなんですけどね」。浜中は江越について、そう話す。江越が5年目の奮起を見せ、活躍してくれれば阪神の多くの問題は解決する。何よりチームの勝利も増えるはずなのだが。(敬称略)

17年、江越はオーナー杯ゴルフ大会でクラブを手に左で素振りする
17年、江越はオーナー杯ゴルフ大会でクラブを手に左で素振りする