野球の世界には、いや世の中には、こういうことがあるから面白い。思わずうなってしまいました。2日の東京ドーム。記者席で巨人-阪神戦を見守っていました。おっ。丸やんか。広島時代、よく話した丸佳浩外野手が巨人にFA移籍したのは、もう昨年オフの話。すっかり巨人の一員として君臨している様子です。

そしてこの試合、丸は阪神馬場皐輔投手から右翼席へ軽々と移籍1号ソロを放ったのです。さすがやな。そう思っているとネット情報を見ていた記者仲間が言います。

「長野も打ちましたよ」。おや? ナゴヤドームでの中日-広島戦。7回の先頭打者として打席に入った広島長野久義外野手が一時は勝ち越しとする1号ソロをマークしたというのです。言うまでもなく長野は丸のFAの人的補償として広島に移籍した選手です。

そんな2人が開幕4試合目でともに移籍初本塁打そろい踏み。こんなこともあるんだな-。不思議だ。そう思えて仕方がありません。そこで3日の試合前、東京ドームで練習を終えた丸に聞いてみました。

「そうですよね。不思議ですね。昨日(2日)試合が終わってから長野さんが打ったのを知って。へえ、というか。なんか不思議ですよね」

丸も因縁めいたものは感じていた様子。ひょっとして答えにくい質問だったかもしれませんが持ち味の淡々とした風情ではありましたが、率直に話してくれました。

この丸、開幕3連戦はマツダスタジアムでの古巣広島戦で迎えました。試合前は広島ファンからのヤジが心配でしたが報道では拍手の方が多かったとのこと。ホンマかな、と広島担当に確認すると、やはり、そういうことのようでした。

そこで思い出されたのが2月、沖縄キャンプで広島の鈴木清明球団本部長が話していた言葉です。

「長野が来てくれて、丸が出ていったことに対するマイナス・イメージというか、そういうものが一気に吹き飛んだ感じだよ」

確かに丸が広島から出たときは「やはり巨人か」というムードが私も含めて感じていました。しかし人的補償が長野であると判明してからは、華やかなスターの加入ということで広島サイドを中心に一気に盛り上がりました。

そういったムードづくりも含めて広島の戦略とすれば、やはり、おそろしいチームだという気もします。丸も長野も移籍1年目、チームも含めてどうなるか。いよいよシーズンが始まりました。

移籍後初本塁打を放った広島長野久義(2019年4月2日)
移籍後初本塁打を放った広島長野久義(2019年4月2日)