こんな姿を予想できたか…。できた人もいる。「あのコントロールなら、どこに行っても同じ」。冷静な分析だった。
海を渡った藤浪晋太郎だ。鮮烈なデビューから、こうまで落ち込むのか。トレードで出してやった方がいいとか、メジャーも選択肢とか、とにかく環境を変えることが一番と言われた。新天地に選んだのはメジャーのアスレチックス。大きく環境は変わった。しかし、藤浪は同じだった。
22日(日本時間23日)、先発したレンジャーズ戦。相変わらずの乱調で、3回途中降板。8失点の敗戦投手。兆しすら見えず、ここまで裏切れば、今後、先発のチャンスは失われていく。
すべてを狂わせているのがコントロールの悪さである。実際、この日の最速は162キロ。この球があるのに生かせない。挙げ句、デッドボールを与え、乱闘寸前になった。日本でもおなじみの光景…。このまま藤浪は沈んでいくのか。限りない可能性があるはずなのに、いまの藤浪はもがくしかない。それを見るのはファンとしてつらい。
そんな時に阪神に現れたコントロールに優れた投手。タイガースの「村上」が一躍、時の人になった。4月22日の中日戦で2安打完封。プロ初勝利を飾った。先の巨人戦での7回完全試合での降板は論議を呼んだが、今回でフロックでないことを証明。何より無四球が素晴らしい内容を物語っている。
村上の投球フォームがテレビに流れたが、どこを見ても、リリースポイントが一定であった。ブレることのない球離れ。ほとんどが低めに集まり、失投がない。こういう投球ができるのは天性のものなのか。
「スピードとコントロール。両方備えていたら、そりゃ絶対よ。しかし、そうはうまくはいかない。オレはコントロールを取った」。制球についての話を聞いたのは全盛時代の北別府学だった。精密機械と表現された制球力をどう身につけたのか。「狙ったところに投げる練習を繰り返す。特にキャンプではピンポイントのコースにひたすら投げた。続けて何球も同じコースに投げられるまで、ピッチングに終わりはなかった」。北別府はスピードボールも持っていたけど、勝負はコントロールと決めてマウンドに立ち続けた。通算200勝以上できたのは、他の投手とは比較にならない制球力。「ボール1個、いやボール半個の違いを投げ分ける。自在に操れるようになって、勝てる投手になれた」。
北別府の言葉は貴重だし、今後の投手の進むべき道を照らしているように思える。野球界はスピード時代で、球速140キロ後半は当たり前の普通。150キロがもはや常識で、160キロ台を平気で投げる投手が多くいる。だが、これは数字が出るからわかりやすいけど、制球の精度を判定する数値はない。あえていうなら四球の数になるのか。
そういう意味では今回の村上の無四球投球が圧巻ということになる。「同じ走者を出すなら、ヒットを打たれろ。四球は守っていてガックリくる」。「ノーアウトでの四球は失点につながる」。四球にまつわる話はあるが、村上は、そんな心配を一切、させなかった。それは守りやすかっただろうし、守りのリズムもテンポも、最高によかったはず。これから先、どういう投手になっていくかは、わからないけど、目指すスタイルがはっきりしているから、大崩れはないだろう。
村上のピッチングを見終わったあと、藤浪の投球を見た。実績、ネームバリューは大きく違うけど、藤浪を思うと悲しくなってくる。どうにかならないのか。環境を変えて、練習法も考え方も変えても、コントロールは手に入らない。失うのは簡単、元に戻すのは困難。村上には持ち前のコントロールを手放してほしくない。(敬称略)【内匠宏幸】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「岡田の野球よ」)




