<みやざきフェニックス・リーグ:巨人5-2中日>◇15日◇サンマリンスタジアム宮崎

日刊スポーツ評論家・田村藤夫氏(61)が、今リーグ2試合目の中日戦を観戦した。ドラフト1位の2年目・根尾昂内野手(20=大阪桐蔭)のショートの動きをじっくりリポートする。

8回1死走者なし。巨人香月のセンター前の打球に反応良く飛び込む。捕球してから起き上がり、一塁へのスローイングも良かった。

控えめに表現して、根尾はヒットを1本アウトにした、そういうプレーだった。1歩目のスタートが素晴らしい。打球への反応が速く、反応の良さが1歩目に直結しているのが根尾の運動能力の高さだろう。打球に飛び込むタイミングもどんぴしゃり。目測がしっかりしているから、飛び込むタイミングも狂わない。13日のDeNA戦では、どこか全力プレーに見えないと感じたが、このプレーには判断の速さを含め、めいっぱいの動きだった。

いっぱいいっぱいのプレーというもので、センター前ヒットをアウトにしてくれるのだから、バッテリーからすれば1アウト以上に助けられる。私は事あるごとにファームで励む若いショートには、センター前への打球判断と、飛び込むギリギリのプレーの大切さを強調してきた。反応がいいショートには、こうしたスーパープレーが可能だということを知ってもらい、限界にチャレンジしてほしい。

このプレーで、根尾の課題だったスローイングには何の問題もなかった。根尾の強肩は素晴らしい。特に三遊間への打球を捕球し、肩の強さと下半身の踏ん張りが求められる場面で見せる強肩は圧巻だ。それが、どちらかと言えば余裕でアウトにできそうなタイミングの時に、悪送球ということが何度かある。

このプレーでは、飛び込んで好捕、起き上がって送球で、何かを考える間がなかった。それがいいのかもしれない。ちょっとでも間があると、瞬時にどこかに余分に力が入るのかもしれない。一連の動きを見ながら、スローイング安定への手掛かりはないものかと、美技の余韻の中で考えていた。

一方、7回の守備は危なっかしさがあった。正面へのショートゴロ。私は数人の編成担当と見ていたのだが、根尾がゴロに入る動きを見て「危ない!」という声が2カ所から上がった。つまり、バウンドが合っていない。これは基本的なことだが、ゴロはいつ捕球するのが捕りやすいかと言えば、バウンドが上がりきったところか、ショートバウンドと言われる。

根尾のゴロに対する動きが、バウンドに合っていない。だから、瞬間的に見極められる編成担当から「危ない!」と声が漏れてしまったのだ。結果として根尾はこの打球はアウトにしている。正面のゴロに対してバウンドに合わせて正確に入ることは基本で、ショートとしてとても重要だ。確実にマスターしておかなければならない技術だ。

「ショート根尾」というのは、高校野球ファン、プロ野球ファンにとって夢のある挑戦だと感じる。それゆえに、見守る周囲は非常に高いレベルで適性やプレーの質を吟味する。ショート根尾としては、まだまだひとつずつ丁寧につぶしていく作業が求められる。

16日は予備日。みやざきフェニックス・リーグからのリポートも残すところあと2試合。17日は阪神-楽天(サンマリン宮崎)からリポートする予定だ。(日刊スポーツ評論家)