日本ハム斎藤佑樹投手(32)のリハビリを沖縄・名護で取材した。昨年9月のイースタン・リーグで見た斎藤は、いいところなく、打ち込まれていた。思えば、その時すでに右肘に痛みを抱えていたのかもしれない。誰もがどこかしらに痛み、不安を抱えている。それはプロで生き残ろうと必死に戦う選手にいえることだ。

ブルペンで投球する日本ハム斎藤(撮影・黒川智章)
ブルペンで投球する日本ハム斎藤(撮影・黒川智章)

右肘靱帯(じんたい)断裂を負い、保存療法を選択した。キャンプではリハビリの投げ込みを続けており、現状は順調に進んでいるようだった。ブルペンに入り最初は捕手を立たせ、肘の動きを確認するように投げ始めた。70球目から捕手を座らせ、150球を過ぎてから力を入れ始めたように映った。170球目からはさらに力を込め、200球でリハビリのピッチングは終わった。

試合で投げることを目標に、そのことに集中している様子は伝わってきた。故障した投手なら誰しもが同じ心持ちでリハビリに取り組む。斎藤が特別なわけではない。それでも、黙々とリズムよく投げる中で、時折映像を確認し、肘から肩への動きを確かめながら投げ続ける姿には、何としてでも、もう1度マウンドに戻るんだ、という強い意志を感じた。

試合で投げる状態を基準に考えれば、この日の内容はまだまだ遠く及ばない。だから、リハビリのペースが遅いなどと指摘する意図はまったくない。肘の靱帯が断裂し、保存療法で治しながら、こうして投げている姿は驚きだった。

このまま、仮に順調に投げられるようになったとしても、134~135キロのストレートが軸になるだろう。昨年9月に見た斎藤は、ほぼ半速球に近いボールを、緩急もつけず、打者と駆け引きをする様子もなく、痛打を浴びていた。その姿にプロ10年目にしては工夫のなさがにじみ、見ていてさみしさを感じた。

これからの斎藤のピッチングには、極端なことを言えば、三振を取る必要はなくなるだろう。いかにしてタイミングを外してゴロを打たせるか、打ち損じのフライに仕留めるか。そういう投球をより一層深く目指していくしかない。

そのためには、復調したとしても134~5キロのストレートを、きっちり制球することが絶対条件になる。わずかでも制球が乱れれば、スタンドに運ばれる球速だ。制球を生命線として、相当なレベルに磨いてこそ、初めて出発点になる。

今後は変化球も交えていく予定だと聞いた。力の入れ具合も少しずつ上げていくはずだ。昨年の苦戦の要因をあえて指摘しておくなら、カウント球をつくること、ストライク先行の流れをつくること、そして勝負球を磨くことになる。その中で緩急をつけたり、丁寧にコースをつき、打者のタイミングを外すためにフォームに強弱をつける、そしてストレートと変化球のコンビネーションをもっと突き詰めることが求められる。

技巧派が、復調した時の斎藤のあるべき姿である、と痛感する。逆に言えば、そうでなければ復帰へのマウンドはさらに遠のいてしまうだろう。(日刊スポーツ評論家)

▽日本ハム斎藤 (かつてのフォームは)肘と肩に負担かかっていたので、それを、なるべくなくすようにって、いっぱい投げて感覚を養っている。いい方向にはいってくれると思います。結局は、試合で結果を出さないといけないですけどね。

荒木投手コーチ(右から2人目)と話す日本ハム斎藤(撮影・黒川智章)
荒木投手コーチ(右から2人目)と話す日本ハム斎藤(撮影・黒川智章)