<イースタンリーグ:巨人12-3西武>◇21日◇ジャイアンツ球場

選手として日本ハム、ロッテ、ダイエーで21年間、コーチとしてソフトバンク、阪神、中日などで21年間(うち1年間は編成担当)、計42年間のプロ野球人生を送った田村藤夫氏(61)は、西武のドラフト3位で2番ショート先発出場・山村崇嘉内野手(18=東海大相模)に注目した。試合中の動きを観察すると、ぜひ改めてもらいたい点が見えてきた。

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打撃ではバットコントロールの良さをいかんなく発揮して、第1打席の内野ゴロ以外は中身が感じられた。自分の良さを存分にアピールできている。

走者としては状況判断がまだ甘いと言える。3回の1死一、二塁で二塁走者の山村は、川越の左翼への大きな当たりに、タッチアップしたがサードでアウトになった。左翼手の動きを見ながらのスタートだったが、私の目にはちょっと中途半端に映った。5点負けている状況で、無理して三塁を狙う場面ではない。行くなら100%セーフという確信をもったスタートを切ってほしい。

守備に目を移すと、3回裏のテームズの打球は、バットの先っぽの当たりで、ショートへフワッと上がった。山村はジャンプはしていたが、絶対に捕ってやろうという意思は見受けられなかった。私は捕手で長くプレーしてきたので、打った瞬間の内野手の動きで、届くかどうか感覚的に判断する。山村からすればギリギリのプレーかもしれないが、スタンドから見ていた私の目には必死さは伝わってこなかった。フワッとした打球だけに、わずかだが時間的余裕はあった。少し下がってからジャンプするなど、もう少し粘れたのではないか。

非常に気になった動きがあった。7回の満塁での前進守備だった。投手が投げ、捕手が投手に返球する。その時、通常ならばセカンドとショートは万が一に備え、バックアップに入る。それは捕手からの返球が暴投となり、センターへ抜けないよう、投手の後方をケアするのだが、山村の動きがとても気になった。ちょっとセカンドベース方向へ歩いているだけに見える。全くバックアップの目的意識が見えない。形ばかりの流れ作業で、万が一に備えようという緊張感も、準備しようという意欲も感じられない。

これは基本的な動きだが、リーグを代表するソフトバンクのショート今宮も、それこそ西武の源田も怠らずにやる動きだ。私の現役時代、捕手から投手に暴投して走者が進塁したことは一度もない。コーチ時代に見たこともない。しかし、それでもまさかの時の備えて二遊間はバックアップに入る。この試合のセカンドはスパンジェンバーグ。彼はバックアップに動かない。必然的に山村がしっかり入るべきだが、そんな意識はなかったように思えた。

この日、私の目には山村の走者としての振る舞いにもいささか疑問に残る部分が多くあった。5回1死一、二塁の攻撃で一塁走者の山村は、次打者のセカンド併殺打で二塁で封殺された。チェンジになったのだが、歩いてベンチに引き揚げていた。同様に、3回のタッチアップで三塁で刺された時も歩いてベンチに戻っていた。ショートは内野の要で、なるべく素早く守備位置について準備することが求められる。

何も野球少年少女のお手本になれなどと声高に主張する気持ちはない。そういう観点からの指摘ではない。必ず誰かは見ている。現にこうして私は一連の緩慢な動きを見てとても気になった。同様に、相手チームの選手がこうした動きを見れば、そこにスキを感じるだろう。なにより味方から信頼されなくなる可能性だってある。

私はバックアップについて今宮や源田もしっかりした動きを欠かさないと指摘した。山村はいずれその源田とレギュラー争いをしなければならない。1軍で定位置をつかむことは至難の業だ。そこには古い言い方かもしれないが全身全霊を注ぐほどの集中力と全力プレーが求められる。誰が見てもスキのない、常に周囲に気を配るショートになるためには、この日見せたような緩慢な動きは1日でも早く改善することを切に願う。(日刊スポーツ評論家)