<イースタン・リーグ:巨人6-2DeNA>◇4日◇ジャイアンツ球場

捕手として通算出場試合1527、コーチとして4球団で計21年間(うち1年間は編成担当)指導にあたってきた田村藤夫氏(61)が、巨人の小林誠司捕手(31)の現状をリポートする。

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戸郷-小林のバッテリーで2回表は無死一、二塁。田部の送りバントは捕手前というよりも、投前に近いゴロになった。小林は捕って三塁へ。各球団の編成が座るスタンドからは「あ~」と声が漏れた。スタンドから見ていた限りでは、間に合わないタイミングだった。小林がゴロを捕り三塁へ投げようとした時、すでに二塁走者はスライディングの体勢に入っていた。小林の強肩をもってしても間に合わない、判断の悪さと映った。

三振を奪って1死満塁。ここで迎えたのは関根。前日は6打数4安打4打点。この日も初回第1打席でカウント3-1から真ん中ストレートを右中間へ二塁打。よく振れている。小林はどうリードするのか、注目していた。

初球、小林の要求は内角ストレート。関根の打球は中前へ。2点タイムリーとなった。好調な関根のバッティング状態を考えたら、初球内角ストレートの根拠はなにか。第1打席がストレートを打っていたから、関根は今度は変化球待ちと小林は考え、裏をかいてストレートを選択した可能性はある。仮にそうだとしても、外角ではないか。初球内角ストレートでは、入り方として簡単すぎはしないか。

これで関根が凡打だったとしても、私は内角ストレートを選択したリードには疑問が残る。前日、固め打ちした関根を、DHで出場している小林は見ていたはずだ。好調な打者に対し、それも第1打席でストレートを打っている打者に、1死満塁で初球から内角ストレートという配球は、小林のキャリアから言って理解できなかった。

私は、捕手として結果論で言われるつらさをよくわかっている。だから、結果だけで批判することはしたくない。選択した球種に何かしらの根拠があると思いたい。バント処理での判断ミス、そして関根に対する初球の入り方。どうしたことかと感じる。

4回表1死一塁で、DeNAベンチはエンドランをしかけた。バッターは空振り。すると小林はセカンドへ素晴らしい送球をして楽勝で刺している。ランナーは捕手益子で、強肩小林からすれば当然と言えるプレーだろう。それでも、すごい肩だった。

この日、スタメンがアナウンスされた時、「9番キャッチャー小林」のコールにジャイアンツ球場には一番大きな声援が起こった。若い女性の歓声もあった、一気に球場が華やいだ。人気がある、それはプロ野球選手として、奮起する大きな励みになる。

巨人の1軍捕手は大城、炭谷、岸田が登録されている。昨年の開幕戦で小林は菅野とバッテリーを組んだ。19年までは菅野の女房役は小林だった。それが昨年から打撃のいい大城が定位置取りの足場を固め、炭谷はそのバックアップという位置付けになっている。小林は打てないことが響き2軍にいると理解している。

この試合でも9番。いくら打てないとは言え、2軍で9番というのはさみしい。バッティングを見ていても、ストレートだけ待ってスイングしているように見える。当然、相手バッテリーの配球が頭にあるはずで、状況に応じて変化球を狙ってみるなど、何とかしようという必死なスイングを見せてほしい。

肝心の守備面でのバント処理や配球でこうしたもろさを見せては、2軍暮らしが身に付いてしまう。そうではないだろうと、この日の小林を見ていて強く感じた。2軍で出場するなら、圧倒的な守備力、レベルの違いを感じさせる配球で、力の差を見せつけてほしい。

31歳だ。捕手ならまだまだこれからなんだ。今までの経験を基に、相手打者、味方投手の特長を思い描きながら配球を組み立て、内野陣と連係を取って、まさに守りの要として縦横無尽に活躍していく年代だ。このまま2軍でさび付いてはいけない。(日刊スポーツ評論家)