甲子園でのプロ志望高校生合同練習会で注目された左腕、北野(大阪)の長曽我部健太郎投手(3年)は今、受験勉強の日々を送っている。「休日7時間、平日は4時間勉強しています」。一般入試で志望校の筑波大へ合格するためだ。大阪府内トップクラスの進学校で、野球部がグラウンド全面を使えるのは週に1度だけ。その日は後輩たちと練習をするが、あとは自分で体を動かしている。

8月29日の合同練習2日目には、シート打撃で打者5人すべて抑えた。この日の最速は132キロだったが、ネット裏のスカウト陣からは「スピンというかキレがいい。球速は鍛えたら速くなるが、キレは教えられるものではない」との声も聞かれた。現在の自己最速は138キロ。身長165センチと小柄な長曽我部だが、球速より速く感じる直球を伸ばせば、浜田高校時代は130キロも出なかったソフトバンク和田のような存在になれる可能性も十分だ。

シート打撃で対戦し、空振り三振を奪った今秋ドラフト候補の京都国際・早(はや)真之介からは「見たことがない軌道のスライダーだった」と声をかけられた。長曽我部は「2年の春くらいからナックルカーブのように人指し指を立ててスライダーを投げたら、速くなり曲がるようになりました」と、説明する決め球もある。

育成も含め今秋のドラフトで指名されれば「いきたい」と即答した。合同練習会では「自信がついた部分もあるし、キャッチボールの球の伸びや遠投の距離などほかの選手は全然違った。課題も見つかった」と、全国レベルの球児との練習は大きな刺激となった。「早くたくさん練習できるようになりたい」と机に向かう。漫画家の手塚治虫や橋下徹元大阪府知事らを輩出した北野には、戦前の旧制北野中を出て東京セネタースなどで通算63勝と活躍した浅岡三郎投手がいる。学校2人目、戦後初のプロ野球選手の夢を「より現実的にとらえられた」と話す。

甲子園、東京ドーム合わせて118人の球児が参加した。今秋、高卒即プロ入りだけでなく、大学、社会人などを経由してのプロを目指す選手たちにとっても、合同練習会は貴重な時間となったようだ。【石橋隆雄】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)

8月29日、プロ志望高校生合同練習会 ウオーミングアップを行う北野・長曽我部
8月29日、プロ志望高校生合同練習会 ウオーミングアップを行う北野・長曽我部