今年の夏の甲子園は、残すところあと1試合。地方大会から撮りため写真を見返した。今夏、大阪大会で目が離せなかった存在の1人が、大阪桐蔭の背番号11中野大虎(だいと)投手(2年)だ。虎と名のつく通り、祖父がプロ野球・阪神の私設応援団長を務めていたという一家そろって根っからの阪神ファン。チャーミングな笑顔と投打ともに積極的なプレーでチームを鼓舞し、帽子のつばには「猛虎魂」と記し、甲子園での登板時は脳内で阪神のチャンステーマを流すほどの、大の虎党だ。
撮影して驚いた理由は、ベンチ内には、中野がもう1人監督のような、立ち振る舞いだったからだ。
同校の西谷浩一監督(54)の定位置は、ベンチ内でも本塁側。その反対側には片手を壁につき、試合を眺める中野がいる。しかも、2年生でありながらどっしりと構えていて、とにかく元気。チームが得点すれば、ベンチ内でハイタッチ。走者がかえれば、走者をハイタッチで出迎える。イニング間は、選手の飲み物や道具を手渡す、ナイスガイだ。
今春のセンバツでは、中継ぎとして登板し、甲子園デビューを果たしたが、今大会は甲子園では春夏通じて、8日の興南との1回戦で、4安打107球の初先発初完封を飾った。指揮官は中野の人柄を「ザ関西人」と表現。「目立ちたがり屋ですし、気遣い、目配りもできます。僕のお茶がぱっとなくなったらぱっとお茶持ってくる、相手をよく見ている子です」。
相手への気遣いのみならず、試合出場への意欲もなかなかのものだという。西谷監督は「どうしようって(マウンドを)見たら替えるなオーラを…。これ多分替えたら怒るなと思って、打たれるまで行こうと」。気遣いだけじゃない、戦力としての自信もみなぎるあまり、指揮官をタジタジにさせる素直な選手だ。
大阪桐蔭は2回戦の小松大谷戦で敗れた。インタビュールームで中野の姿を目撃すると、髪形がさらに短くなっていた。聞けば普段は3ミリで刈り上げるが、試合前日に「勝つために髪は2ミリにしてちょっと短くしたんです」という。そして「新チームはどういうチームになるかわからないけど、春の甲子園も出場したい。まずは、1勝ずつ勝っていきたいです!」。秋の府大会も、自慢のベンチワークと“ザ関西人”パワーで、再び指揮官とナインと桜が花開く、春の甲子園を目指す。【中島麗】




