これが広島のおそろしさと言えばそれまでだが、それにしても。巨人に連勝し「さあ!」と乗り込んだマツダスタジアムで連敗。ぶち破らなければならないカベはやはり厚いのか。

原因を挙げていけば、いろいろとあるだろう。それでもシンプルに見ればハッキリしている。4番打者が打っていれば状況は違っているだろうということだ。

大山悠輔に安打が出ない。特にこの試合、ため息の出る場面が続いた。1回、広島の難敵ジョンソンから初めて3番に起用されたマルテが二塁打を放った。これは盛り上がる場面だ。ここで先制できれば…。指揮官・矢野燿大の起用がズバリ当たり、流れが来ていた可能性はあった。

だが4番大山は三ゴロで凡退。2点差だった6回、やはりマルテの適時打で1点差にした後、なおも1死一、二塁の好機でも三ゴロに倒れた。この日は4打数無安打、延長11回の前日は走者を置いた場面3度を含む5打数で無安打だった。今回のマツダスタジアムでまだ快音が響いていない。

自身も03年に24歳で若き4番打者を任された打撃コーチ・浜中治は試合後「すぐに1本出ますよ」と責めなかった。もちろん打てないのは仕方がない。3割を打てば褒められるこの世界。このぐらいのことは普通にある。それではなぜここに書くか。それは大山が4番打者だからだ。

広島の4番は鈴木誠也だ。指揮官・緒方孝市が3連覇中の17年から4番を任せている。そんな緒方に鈴木の4番について聞いたのは昨夏のことだった。しっかり育てているな。そんな話に緒方は首を振った。

「あいつを育てようとか、そんなことを思って俺は4番を打たせているんじゃないですよ。ダメなら代えます。でも代えさせないようにあいつがやってるんです。そりゃあ、ものすごい苦しい思いをしながらやっていると思いますよ」

成長した部下に「俺が育てた」と上司が言うのは野球の世界だけでなく一般社会でもよくあること。しかし緒方の言葉は正反対だった。あいつがやっているから代えない。育成の気持ちはあるに決まっているが、それでも勝負の世界に生きる厳しさを強調した。

大山も、よくやっている。30日巨人戦は1回に出た大山の3ランで勝負あったと思った。だけど根性を見せるのは今だろう。2日、大山が打って阪神が勝てば流れは必ず変わる。(敬称略)