ガッツポーズの起源は諸説あるが有名なのはガッツ石松だ。74年4月11日にガッツ石松がWBC世界ライト級王座を奪取したときに両手を上げ、喜んだ姿からそう呼ばれるようになったとされる。現在、4月11日は「ガッツポーズの日」となっている。

今季の阪神は指揮官・矢野燿大がベンチ前で右手を掲げ、ガッツポーズをつくる。話題の「矢野ガッツ」だ。安打が出たときが多い。選手も呼応し、塁上でガッツポーズをベンチに向かってつくる。

しかし虎番記者の記事にもあるようにこの試合の7回、決勝二塁打を放った大山悠輔にそれは出なかった。0-0の無死一塁からの決勝打。普通は出る。

この日は経緯が違っていた。無死一塁から矢野は大山に送りバントを命じていた。大山はこれを2度、ファウルし、失敗。そこからの安打だった。

野球に限らず、組織スポーツは指揮官の指示を守ることが重要視される。結果は別にして、犠打のサインでバントができないのは失敗だ。その後で適時打が出ても素直には喜べない。それ以前に「4番の俺にバントか」と悔しさが勝ってもおかしくない。

「悔しかったんだろう。ガッツポーズが出なかったからね」。ヘッドコーチ清水雅治もそう見た。そこは注意するのか? という質問に「それはないですけど」とも話した。

そもそも4番に犠打指令とは。1死二塁にして誰に期待したかったのか。5番マルテか。6番梅野隆太郎か。それはいいが、それなら4番打者の意味は何だという話になる。

同時に矢野をそんな気にさせたのも大山だ。はっきり言って大山の4番は育成方針の意味が大きい。確かに長打力はあるが、ここ一番の勝負強さはどうか。4番としてもっとも大事なところが課題だ。

送りバントのサインに大山が悔しがるのは当然だし、その悔しさを晴らせるのも自分だけだ。広島に3連勝を決め、甲子園に首位巨人を迎える。特に菅野智之が投げる8日は重要な試合だ。

「もう一度、菅野をつぶせるようにやりたい」。ヘッドの清水はそう言ったが大山もそう思っていなければならない。5月15日には菅野から7号2ランも放っている。もっと言えば今年の「ガッツポーズの日」、大山は今季1号を放っている。菅野を打って派手にガッツポーズをつくれ。(敬称略)