6回表阪神1死一塁、梅野は遊ゴロ併殺打に倒れる。左はヤクルト村上(撮影・小沢裕)
6回表阪神1死一塁、梅野は遊ゴロ併殺打に倒れる。左はヤクルト村上(撮影・小沢裕)

今季「80勝」は夢と消えた。残り27試合の時点で全勝が条件だったからこれは仕方がない。80勝の目標は来季に期待だ。

この日は典型的によくないときの展開だった。3回に先制したが苦手ブキャナンを相手に好機をつくりながらモノにできない。負けるときの特徴、「あと1本が出ない」である。

そんな中でも「いよいよあかんな」と思わせたのは6回かもしれない。逆転された直後。疲れの見えるブキャナンから先頭の大山悠輔が安打で出て無死一塁。高山俊は三振したが次は梅野隆太郎だ。しかし真ん中付近の変化球を打って遊ゴロ併殺に倒れた。

8番打者に大きな期待をしても…と思うが梅野は勝負強さが売りである。これで一気に流れがヤクルトに行ってしまったと見た。

この3連戦前、梅野と少しだけ打撃の話をした。こちらが聞いたというか軽く水を向けると真剣な表情で話し始めた。

「福留さんや鳥谷さんに最近、指摘されるんです。『ボールを見てるだろ』と。やっぱり長い間、実績を積んできた人たちは分かるんやな、と思いました」

野球用語、それもプロの使う言葉は難しい。ボールを見るのは当たり前。ここで言う「見る」とは長く見過ぎてしまい、結果的に球への対応が遅れることを指す。不調に陥ると多くの打者はそうなるという。

「見過ぎるから差し込まれてフライになったり。そういう感じなんですね。今は」。不振の要因をそう自身で分析した。

前日24日は梅野が尊敬する日刊スポーツ評論家・中西太の「開くな。上からたたけ」というアドバイスを真剣に聞いていた。まるで安打が出ていない状況ではないがモヤモヤを吹き飛ばしたいのだろう。

チームが強かった春先は梅野がよく打った。特に開幕直後は絶好調。4月9日DeNA戦ではサイクル安打もマークした。4月末で3割4分あった打率は交流戦前に3割1分4厘に。交流戦を終えると2割9分になった。さらに前半戦終了時点では2割7分に落ちた。この日は4打数無安打で2割5分5厘となった。

梅野のキャリアハイは132試合に出場した昨季の2割5分9厘だ。なんとかそれは超えたい。チームもギリギリ、Aクラスの可能性が見える状況だ。ケガをしながらも戦力となり続けている梅野のさらなる奮起を期待したい。(敬称略)

サイクル安打を達成し笑顔を見せる梅野隆太郎(2019年4月9日撮影)
サイクル安打を達成し笑顔を見せる梅野隆太郎(2019年4月9日撮影)