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近本の新記録デーなのに…また締まりのないゲーム

試合前、近本光司にこんなことを聞いてみた。近本選手はこれまでの野球人生で塁を踏み忘れたことはある? すかさず、こんな答えが返ってきた。

阪神対ヤクルト ヤクルトに完封負けし力なくあいさつする矢野監督(左から2人目)ら(撮影・上山淳一)
阪神対ヤクルト ヤクルトに完封負けし力なくあいさつする矢野監督(左から2人目)ら(撮影・上山淳一)

「長嶋さんに引っ掛けて何か言わせようと思ってるんでしょ。何も言いませんよ」。あるかないかも言わないところを見るとひょっとしてあるのかもしれないが、シーズンも終盤、新人ながら取材慣れしてきたことだけは分かった。

しかし同時にこんなことも言った。「幻の本塁打ですよね。あれが本塁打になっていたら長嶋さんはトリプルスリーを達成していたんでしょ? そういう話は聞いたことがあります」。

その通り、巨人長嶋茂雄がルーキーイヤーの58年(昭33)にやらかした一塁ベースの踏み忘れは有名だ。ジャスト61年前の58年9月19日。広島戦(後楽園)で同点の5回に勝ち越し28号ソロを放ったものの一塁手が「ベースを踏んでいない」とアピール。塁審がこれを認め、本塁打は取り消された(記録は投ゴロ)。

「完全に僕の失敗でした。ベースを踏んだかどうかははっきり言って自信がなかった」。当時、長嶋はそう話し、ミスを認めている。長嶋はこの年、打率3割5厘、29本塁打、37盗塁。「幻の1発」が本塁打なら新人でトリプルスリー達成の偉業だった。

そんな威勢のいい話とは正反対の「あのプレーがなあ…」という話を書く。大山悠輔が7回に送球エラーをして、阪神の今季失策は99個となった。これで00年以来の3桁失策に“リーチ”がかかった格好だ。

こちらの記録は50年(昭25)に197個という途方もないものがあるので、なかなか更新はできないが、当時とは事情が違う。現在で3桁失策はやはり恥ずかしいことだ。

もちろん「あの失策がなければ…」などということを言い出せばきりがない。しかし5位に転落したこの日、抜かれた中日との失策数に2倍以上の開きがあることを考えれば、やはり問題だろう。

「そうですね。本人がどう受け止めるか。大山のあれだってきっちり投げていればゲッツーになるのに。それをどう考えるか。意識の問題としか言えない」

ヘッドコーチの清水雅治はそう言った。打てないのは仕方がない。しかし、また締まりのないゲームだった。せっかくのルーキーの新記録を飾れなかった試合としか表現しようがない。(敬称略)

記者生活30年超の高原寿夫・編集委員が、今シーズンの矢野タイガースに鋭く迫ります。

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