苦しんだ大山悠輔の決勝弾か。ええやないか。両軍投手とも四球の絡む失点が目立ち、ピリッとしない面もあったがそれなりに面白い試合だった。おまけにロングゲーム。虎党はたっぷり楽しめたのでは。

普通ではない展開だが試合前から“異常事態”だった。台風19号の接近により、すでに12日に予定されていた第4戦の開催は延期されていた。阪神は勝てば当然、負けても12日も地元に帰れず、都内に泊まらなければならなかった。

チームに同行している担当記者、いわゆる虎番も同様だ。どうあっても12日までは都内泊が決まっていた。勝敗で予定が変わる先の見えないクライマックス・シリーズに加え、自然の脅威でさらにややこしい。

「そういうわけで結果にかかわらず、明日まで東京に泊まらないといけないんですよ」。試合前、巨人の指揮官・原辰徳にそんなグチを言ってみた。それに対する名将の返答がなかなか面白かった。

「その場合はホテル代金の領収書を読売巨人軍に回してください」

台風は巨人のせいではないし、ましてやこちらの経費は当然、日刊スポーツ持ち。どこからそんな発想になるのか分からないが何とも余裕を感じさせるジョークだ。常人ではちょっと言えないな、と思った。そんな原に今季途中、監督としての矢野のイメージを聞いたのはシーズン中だ。

「明るくやってるよね。ガッツポーズつくって。でも選手時代はあんなじゃなかった。どうにかして、何とかこっちをやっつけてやろうと向かってきていたもんな。ギラギラして」

監督・矢野の1年目。若い選手を育て、戦力にするために試行錯誤を続けたシーズンだ。思うような結果が出たのかどうか。3位だったのでたっぷりと合格点は付けられないのだが、それでも面白かった。

「ファンを喜ばせる」。それを念頭に戦ってきたことを思えば、日本シリーズをかけて戦う19年の最後を、王者巨人との「伝統の一戦」で終われることになったのは、ひょっとしてそのご褒美なのかもしれない。

試合途中、13日の試合時間が「午後3時半」に決まったと発表された。阪神も記者も都内ステイが続く。ひょっとして阪神が逆転突破…なんてことになったら15日の泊まりまで。巨人軍はホテル代を払ってくれないし、会社の経費は膨らむ一方だが、そんな事態になったら面白い。(敬称略)