第1クール最終日となった前日5日の打撃練習中、ちょっとしたアクシデントがあった。近本光司の打球が一塁ベース付近にいた外野守備兼走塁コーチ・筒井壮の左足を直撃したのだ。大事には至らなかったが筒井は「ちょっと腫れましたね~」と苦笑。それを受け、近本に「キミの足でなくてよかったりして。やっぱり御利益かも」という話をしてみた。何のことか。

キャンプ・インの1日、近本光司にあるものを渡した。「足の神」として知られる服部天神宮(大阪・豊中市)のお守り、絵馬だ。同神社の宮司・加藤芳哉は虎党、野球ファン。これまでイチローを始め、多くの選手にお守りを託された。今回は2年目の近本に、と預かっていた。

「そうなんですか? いただいていいんですか? それはありがたい。その神社のことは知らなかったけれどオフになって時間があれば、ぜひ、お参りさせていただきたいですね」

そう言って受け取った近本は、お守りをさっそくバッグにつけている。絵馬は宿舎ホテルのドアノブにぶら下げているそうだ。いかにも実直な近本らしい、と思った。それだけ2年目に向け、故障に留意しているということでもあるのかもしれない。

冒頭の近本、筒井にはちょっとした“秘話”がある。ルーキーだった昨年のキャンプ。近本はすべてのメニューが終わった後、筒井とマンツーマンで一塁へ帰塁する練習をしていた。その理由についてオフになってから筒井は明かした。

「足が速いのは分かっていたけど盗塁技術そのものは正直、心配でした。彼は大学には投手で入っているし、経験も浅い。プロレベルではどうかな、と思っていたんです。走るためにはリードの状態から戻れる技術がまず必要になる。俊足だけで盗塁王になれるなら短距離が速い陸上選手はみんななれますからね」

そこで帰塁練習から始め、慣らしていった。その結果が36個を走っての盗塁王だ。昨季を振り返り、近本は「あれは身になりましたね」と振り返る。

そんな基本を教えてもらったコーチに打球を当ててしまい、申し訳なさそうにしていた近本。でもお守りがあるし、自身は大丈夫だったなあ? という問い掛けには笑うだけだったが。厳しい競争が続く中、レギュラーとしての位置づけが現実的な近本の2年目に注目したい。(敬称略)