チームが波に乗っていく要素とは何か。古くて新しい命題だ。その点について緒方孝市とじっくり話したことがある。18年まで広島に3連覇をもたらし、今季から日刊スポーツ評論家に就任した緒方だ。

「ひと言で言えば接戦を取ることですね。打ち勝つ試合は派手で見ていて面白いかもしれませんが、チームに勢いがつくのは接戦を勝ち切ること。接戦を取れば連勝できるんです。だから結局、勝敗のカギを握るのは投手力なんです」

簡潔かつ明確にそんな話をしていた。自身が広島監督に就任したときも最初に手掛けたのがブルペンを充実させることだった。

その理論でいけば、この日、阪神は理想的な勝利を収めるはずだった。ボーアの2ランで先制したがその後は続かない。それでも西勇輝から岩崎優、スアレス、そして最後は藤川球児と継投し、1点差を逃げ切れれば…という試合だった。

冷静に考えれば、それが阪神理想の勝ち方だろう。開幕からの連敗で防御率は落ち込んでいるが昨季までを見れば、投手力でしのぐチームだった。対照的に打線、得点力が低く、それではあまりにも苦しいということで外国人選手を獲得したのだ。

その助っ人が先制の1発を放って、投手力で守り切る。ここに来て、そういう戦いになるはずだった。しかしクローザー球児が自分の仕事をできず、手中にしかかった阪神の5連勝はするりと逃げていった。

「申し訳ないけどベテランなのに頑張っているなとかそういうふうに言われるのは好きじゃないんです。戦いの場にいる以上、年齢がどうとかは関係ないと思っていますから」

球児とそんな話をしたのは昨年の宜野座キャンプだったか。今月21日で40歳になる球児は自分で言う通り、有言実行を続けてきた。しかし、ここに来て、明らかに苦しんでいる。

現状、状態はよくない。この日は守備のミスもあったが球児が自身のポジションをまっとうできる状況にあるとは、なかなか、思えない。指揮官・矢野燿大は何かを判断するのか。いずれにしても球児がこのまま終わるとは思いたくない。だからこそ現在の苦境をまず乗り切る必要がある。

この日、神戸で負けた巨人に少しでも近づいていくためには、やはり、ブルペン整備、再検討が急務としか言いようがない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)