4月23日は鉄人・衣笠祥雄の命日だ。3年前、18年の同日にこの世を去った。その日、松山坊っちゃんスタジアムで予定されていた阪神戦を解説するため松山空港に姿を見せた江夏豊とロビーで立ったまま話したことを思い出す。

「江夏の21球」で知られるように2人は親友だった。もっとも、そんな関係になったのは江夏が広島に移籍してからである。阪神時代の江夏は2学年上の衣笠に対し、強い意識を持っていたという。

「同じ関西出身だったし、ライバルだと思っていた。それに入った頃は背番号が同じ28番だったからな。『こんなバッターに打たれるかい!』と思って投げていたよ」

そのとき江夏はそんな話をした。衣笠が主力選手になってから付けた背番号3は広島の永久欠番として知られるが入団からしばらくは28番だった。のちに「鉄人」と呼ばれるようになった背景に懐かしい漫画「鉄人28号」が影響しているという説もあるが、鉄人と呼ばれだしたのは3番をつけてから後なので、この辺りはよく分からない。

背番号28の話だ。阪神では現在の投手コーチ・福原忍ら多くの選手がつけた。それでも子ども時代に野球中継に熱中していたとき、それを背負っていたのは江夏だった。だからその印象がもっとも強い。

現在、阪神で28番を背負っているのは小野泰己だ。3年前のその日、話をした小野は衣笠が28番だった歴史を知らなかった。「そうなんですか。それは知らなかったです。そういう背番号をつけさせてもらって、しっかりしないといけないと思います」。真剣な表情でそう言ったものだ。

小野はその年、キャリアハイの7勝をマークしたがその後は故障もあり、伸び悩んでいる。しかし潜在能力は高く、巻き返しが期待される投手の1人だろう。 巨人に完敗を喫したこの試合。秋山拓巳の乱調で大差がついた後に出てきた2番手・小野は巨人のクリーンアップらを相手に2回無安打無失点と踏ん張った。北條史也の2ランが出るなど中盤を面白くしたのは小野、馬場皐輔らブルペン陣の奮闘があったからだ。

昨年ボコボコにやられた東京ドームで今季も負け越しスタートとなった。しかし今年は違う気はする。小野ら脇役の働きを見ても「このままでは終わらん」というムードが、いまの阪神にはある。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

巨人対阪神 阪神2番手の小野(撮影・上田博志)
巨人対阪神 阪神2番手の小野(撮影・上田博志)