なんかザワザワしてきたで-。虎党はそんな思いでいるかもしれない。神宮で広島と激闘を繰り広げたヤクルトが敗戦。阪神はその結果が出る前に甲子園で中日を下していた。これでヤクルトの優勝マジックは「3」のまま。ここまで来て、あまり意味はないけれどヤクルトへのゲーム差は「0・5」になった。

阪神対中日 勝利を喜び合う阪神ナイン(撮影・宮崎幸一)
阪神対中日 勝利を喜び合う阪神ナイン(撮影・宮崎幸一)

甲子園は夏から一気に秋をすっ飛ばして冬になったような寒さである。気候のせいで余計にそう感じるのかもしれないが、この中日戦で目立ったのは「いかにも消化試合」という相手の様子ではなかったか。

最多勝の可能性が残る柳裕也が味方の失策もあって2回までに4失点すると、早々と降板した。逆転の気配も感じられなかったからだろうがシーズンの早い時期ならこんな交代はないはず。その打線もベンチの見立て通りというか、阪神の高橋遥人が絶好調だったにしても8回まで走者1人しか出せなかった。

阪神対中日 2回を投げ終えベンチに引き揚げる中日先発の柳(撮影・上山淳一)
阪神対中日 2回を投げ終えベンチに引き揚げる中日先発の柳(撮影・上山淳一)

今季限りで引く敵将・与田剛にすればチームが苦しい中、頑張ってくれた柳にタイトルをとらせてあげたいだろう。チームの勝敗以前にそちらの方が重要になっている様子だ。それもプロ野球のひとつの側面ではあるが、勝敗以外の別のものを重要視する時点でシーズンは終わっている。それを「消化試合」というのだと思う。

阪神にしても、半ばあきらめムードが流れてもおかしくない状況だったかもしれない。ヤクルトとの直接対決は負けなかったものの連勝もできなかった。「M3」となり、逆転優勝は極めて苦しい状況に。そして5位中日戦を迎えた。

この試合をサンテレビで解説していた元監督・真弓明信(日刊スポーツ評論家)はさすがにその部分を指摘し、試合前から「ここは大事ですよ」と繰り返していた。下位とはいえ、そこはプロ同士。テンションの部分で下がってしまえば勝てない。そしてその敗戦が命取りになる。それを警戒しての心配だった。

しかし「ボクたちは勝ち続けるだけ」と繰り返す指揮官・矢野燿大の言う通り、阪神はこの日も勝った。残りは3試合。全勝すればヤクルトは自力で優勝を決めるしかなくなる。それは思うほど簡単なことでもないはずだ。結果はヤクルト次第にしても阪神がやるべきことは「自分で消化試合をつくらない」ことだ。3試合を「短期決戦」ととらえ、戦ってほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)