神宮で打ってくれ言うたんや。誰がここで打て言うてんねん…といわんばかりの指揮官・岡田彰布のボヤきである。9日ぶりに戻った本拠・甲子園でのヤクルト戦前。岡田の姿は大阪市内のホテルにあった。

マイナビオールスターゲーム2024要項発表記者会見で全セの注目選手を話す岡田監督(撮影・前岡正明)
マイナビオールスターゲーム2024要項発表記者会見で全セの注目選手を話す岡田監督(撮影・前岡正明)

7月の球宴を前にした記者会見に出席。昨季、日本一に輝いた阪神の指揮官・岡田は当然、全セ監督となる。そこで期待の選手を聞かれ、投手で巨人・菅野智之、野手ではヤクルト村上宗隆の名前を出した。特に村上にはこんなことを言っていた。

「今年は調子がいいみたいなんでね。2戦目が神宮だし。そこで160キロのストライクをね。なんとか神宮で1発、ホームランを打ってほしいですね」

全セの主砲としての期待を込め、そうエールを送っていたのだ。それから約9時間後。阪神は先発・青柳晃洋がその村上にセ・リーグトップとなる10号3ランを浴び、2-4での敗戦となった。

阪神対ヤクルト 3回表ヤクルト2死一、二塁、岡田監督(右から3人目)は村上の打席を見つめる(撮影・上山淳一)
阪神対ヤクルト 3回表ヤクルト2死一、二塁、岡田監督(右から3人目)は村上の打席を見つめる(撮影・上山淳一)

虎番記者の囲みが解け、1人ぶつぶつ言いながら歩く岡田に聞いてみる。

監督、ホームランを打てと言うたんは球宴の神宮でのことですよね?

普通の監督なら、ひょっとして「何を言ってる」と怒るかもしれないところだが、そこはどんな場面でもシャレの分かる岡田だ。すぐに返してきた。

「おう。せやねん。ここちゃうんよ。まあ、3ランはあかんわなあ」-。苦笑しながらそう話した。そう、岡田が言ったのはあくまでまだ球宴の話。そこにはまだ早過ぎる。この1発で、この3連戦、村上は要注意となった。それほどに虎党を落胆させる1発だったのである。

阪神対ヤクルト 3回表ヤクルト2死一、二塁、村上は右越え3点本塁打を放つ。投手は青柳(撮影・加藤哉)
阪神対ヤクルト 3回表ヤクルト2死一、二塁、村上は右越え3点本塁打を放つ。投手は青柳(撮影・加藤哉)

阪神打線は4点ビハインドの6回に、ヤクルト先発の吉村貢司郎を攻め、4番に復帰した大山悠輔の適時打などで2得点。逆転へのムードを漂わせたが、結局、3回に浴びた村上の3ランが響く形となった。

これで5月は5勝7敗1分けと借金生活が続く。この日は巨人が広島に負け、首位の座は動かなかったが、混戦は続く。打撃陣不調の中、この位置をキープしているのは投手陣の踏ん張りと、やはり岡田の采配だろう。

細かい野球で勝ち星を積み上げているのだが、だからこそ、そんな野球を破壊されてしまう1発はこわい。あと2試合、やはり村上は要注意。繰り返すが岡田が期待しているのは、あくまで球宴での本塁打だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)