あっと驚かせたのは1点をリードする7回の代打策だ。1死三塁とチャンス。打順は2番手投手・岡留英貴に回る。ここは代打だ。中川勇斗か、小野寺暖か。それとも。コールされたのは栄枝裕貴だ。ここまで8打数2安打。左腕・東克樹が3-1から投じた5球目を引っ張った打球は、しかし、三ゴロ。結果は出なかった。この代打策の狙いを指揮官・藤川球児に聞く。
「(19日・中日戦の)マラーのときにいい打撃をしていましたから。でも3ボールから捕手らしい読みだったり、そういう部分が出せたのか。本人に直接話しています。大きなチャンスでもありますからね。そこで悔しがれるのか、どうか。そんなに何回も(ない)…。勝負ですからね」
常にその日の練習から状態を見極め、起用する球児。最近の調子に加え、今後の育成面を考えて勝負に出たということだろう。正直、独走しているチーム状況があってこそできることとは思う。リスクを取りつつ、先を考えて、手を打つ。どう出るかは今後の話だ。
「悔しい。あんな場面で出たのも初めてだったので結果を出したかった。切り替えて、次、やるしかない。次があるか分からないけどしっかり行きたい」。立命大時代に先輩・東の投球を受けたこともある栄枝はそう唇をかんだ。
そして捕手として、この日、必死の働きを見せたのが今月3日ヤクルト戦以来のスタメンマスクとなった梅野隆太郎だった。ルーキー早川太貴の初勝利アシストを含む、岩崎優まで4人の投手をリード。1失点に抑えた。打撃でも今季初の猛打賞をマークしたのだ。
「(初勝利を)少しでもサポートできたんだったらよかったなと思います。(3安打目の内野安打は)一生懸命走っててよかった!」。ベテランの域が近づく梅野も笑顔を浮かべ、そう話した。
勝利を目指しつつ、次世代の育成を進めることは難しい。いわゆる「勝ちながら育てる」というヤツだ。理想ではあるが、簡単ではない。逆に言えばそれができれば、黄金期を迎えることもできるのだろう。
今季の優勝は間違いない阪神。現在、球児が取り組んでいることが来季以降どう出るか。それはそのときになってみなければ分からないことだ。それでも虎党にとって興味深いことだと思う。この日の2人の捕手の動きに、そんなことを感じたのである。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




