強い阪神である。この日の高橋宏斗、前日11日の大野雄大、そして10日の柳裕也と好投手3人を立てて向かってきた中日を敵地バンテリンドームでスイープ。がっちり首位固めだ。

虎党が喜ぶそんな状況で少しだけドキドキしているのは佐藤輝明の「4割」だ。この日は3打数3安打1四球と勝利に貢献。ここまで首位打者、その数字は4割1分1厘である。

「打率4割」はプロ野球で夢の数字だ。自分の経験で言って、もっともその数字を意識したのは94年、オリックスにいたイチローを取材していた頃。そのシーズン、イチローは前人未到の200安打オーバーの210安打を放ち、一躍、スターとなった。

だが最初に注目されたのは当時なじみが薄かった安打数ではなく「打率4割」だった。日本プロ野球で誰も達成していない数字をこの若者なら…と野球ファンに夢をもたらしたのだ。

結局、達成できなかったのだがオリックスでラストイヤーとなった00年、イチローは79試合目まで4割1分をマーク。最近ではこれがもっとも長く4割をキープしたことになる。

2リーグ分立後の50年以降を見れば、シーズン規定打席に到達し、もっとも長い期間、打率4割をマークしたのは89年の巨人クロマティだ。実に96試合終了時で4割1厘だった。

4割がいかに難しいか。それを説明したのもイチローだ。「無理ですね。4割と言えば5打数2安打ですよ。毎日、2安打しなくちゃいけない。そんなことは考えられないです」。94年当時、4割の話題を出したこちらにそうキッパリ話したもの。当時のイチローは1番打者がほとんど。打席数も打数も多かった。「1日2安打」の難しさを痛感していたのだろう。

もちろん現状で佐藤輝に「4割」などという思いはないと思う。連日の暴れっぷりにも表情は変わらない。「毎打席、集中して入っているだけなので」。虎番記者の質問にそう話すなど淡々とした様子だ。

それでも強い阪神の主軸としてどこまで打つか。期待は高まる。阪神で過去、4割の夢を見せたのは50年の藤村富美男(最終打率3割6分2厘)、そして86年のバース(同3割8分9厘)だ。バースのこの打率はいまだにNPB記録。彼と同じ誕生日の佐藤輝がどこまでやるか。虎党だけでなく、野球ファンの興味は尽きない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

中日対阪神 8回表阪神無死、内野安打を放つ佐藤(撮影・森本幸一)
中日対阪神 8回表阪神無死、内野安打を放つ佐藤(撮影・森本幸一)
中日対阪神 2回表阪神無死、安打を放つ佐藤(撮影・森本幸一)
中日対阪神 2回表阪神無死、安打を放つ佐藤(撮影・森本幸一)
中日対阪神 5回表阪神2死一塁、二塁打を放つ佐藤(撮影・森本幸一)
中日対阪神 5回表阪神2死一塁、二塁打を放つ佐藤(撮影・森本幸一)