「阪神最速」は今回も梅野隆太郎が捕った。甲子園が大きくどよめいたのは8回だ。サンタナに真っ向勝負を挑んだ工藤泰成のストレートが163キロをマークした。阪神投手として最速タイ。以前に記録したのは抑えで活躍したスアレスだ。21年6月8日の日本ハム戦で記録したのが最初だと思う。そのときも捕手は梅野だった。

「163キロを捕るのは初めてかな? スアレス? ああ、スアちゃんも捕ってるね。スアちゃんのはドスンというか重い感じがするストレート。工藤のはピュッという感じかな。表現が難しいけれど。工藤は引っかけた真っすぐの方が速くなる」。ミットに残る手応えをしっかり感じながら梅野はそう話した。

今季初めて1点リードの8回に登板した工藤。しかし先頭に安打を許すと佐藤輝明の失策もあり、無死満塁のピンチを迎えた。なんとか1死を取ったがそれでも満塁。そしてヤクルト打線の3。4番であるセデーニョ、サンタナを迎えた。

ここでマウンドの工藤とともに奮闘したのが梅野だ。上から腕を振る工藤の球がワンバウンドすれば体を張って阻止。持ち前のブロッキング技術を見せつけた。これでセデーニョを空振り三振に。そしてサンタナの初球に163キロがマーク。最後は161キロで空振り三振に切ったのだ。

そのまま無失点リレーで終われば最高だったがドリスが9回に追いつかれた。それでもその裏、粘りを見せてのサヨナラ勝利。1失点に抑えたバッテリーの力は大きかった。

「(工藤の)球速はね、ほんと驚くぐらい速いんで。抑え切るすごさを感じた。あの粘りがあったからこそチームのミスをカバーした。勝因だと思う」。投手陣、特に工藤を称賛して梅野は笑顔を見せた。

「1つレベルアップするときは非常に大きな壁があると思う。ファンの方のボルテージも最高潮に上がってくれたし、こういう風にして乗り越えていくんだというのを見て取れたイニング。ゾワゾワしました、こちらもね」。1点リードの場面で工藤を起用した指揮官・藤川球児も興奮しながら見ていたようだ。

打者では森下翔太、佐藤とヒーローが出現している阪神。粗削りだが投手のスター候補として工藤への期待は日増しに大きくなっている。そこをしっかりと演出したこの日の梅野の力は大きかったと思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

【イラスト】NPB公式戦の球速上位
【イラスト】NPB公式戦の球速上位
阪神対ヤクルト 8回表ヤクルト2死満塁、工藤泰成がドミンゴ・サンタナに投じた球速は163キロを記録(撮影・加藤哉)
阪神対ヤクルト 8回表ヤクルト2死満塁、工藤泰成がドミンゴ・サンタナに投じた球速は163キロを記録(撮影・加藤哉)