49代表が出そろった! 第98回全国高校野球選手権(8月4日抽選、7日開幕、甲子園)神奈川大会決勝で、横浜が9-3で慶応に快勝し3年ぶり16度目となる夏の甲子園を決めた。ドラフト上位候補で最速152キロの藤平尚真投手(3年)が7回途中3失点と試合をつくり、同投手を“兄貴”と慕う増田珠外野手(2年)が2ラン2本で援護した。これでチーム14本塁打として、大会通算本塁打の県記録を更新した。

 昨夏の神奈川大会決勝で最後の打者になった藤平が、笑っていた。右翼からマウンド付近めがけて猛ダッシュし、中堅から走ってきた増田と最初に抱き合った。「本当にうれしい。甲子園まであと1歩のところで負けて、とても苦しかった。うれしくて涙が出ました」。やっと解き放たれた。

 「リメンバー11・1」が合言葉だった。昨年11月1日。秋季関東大会初戦で常総学院(茨城)に敗れ、センバツ出場を逃した。敗戦後のベンチ裏では悲鳴のようなおえつが漏れ、過呼吸が続出した。藤平にとっての甲子園出場は、夏がラストチャンスになった。「あの試合で直球を本塁打されて。真っすぐを磨こうと思いました」。分かっていても打てない直球を投げるため、自主的にジムに通って力をつけ、制球を磨いた。

 リベンジの決勝戦は慎重に入り、序盤はセットポジションで投げた。初回にこの日最速の147キロを計測。解禁したフォークで三振も奪い、7回途中まで7安打8奪三振3失点で試合をつくった。そんな“兄貴”に、4点をプレゼントしたのが増田だった。U-15(15歳以下)で活躍した右腕に憧れ、長崎から横浜入りした。「藤平さんと甲子園に行きたい。藤平さんが投げる時は自分が打って助けたかったです」と初回に先制2ランを放つと、5回にはライナーで左翼席に2ランを放り込み今大会3本塁打で締めた。

 増田は今春、右手首を疲労骨折。夏への焦りが募る中、手術前日に藤平からLINE(ライン)が来た。

 この時期、この時間を絶対無駄にすんなよ。お前は俺にない物を持っている。夏の甲子園で暴れてくれるのを期待してる-。

 今も携帯の待ち受け画面にするメッセージのおかげで、リハビリを乗り越えられた。“兄弟愛”で導かれた聖地には、高校NO・1左腕と評される履正社・寺島も出場を決めた。藤平は親交が深く「今朝『一緒に甲子園を盛り上げよう』とLINE(ライン)しました」と互いに有言実行。「甲子園では自己最速を出せるよう、自分のストレートを見てもらいたいです」。最初で最後の甲子園で、151キロをマークした大先輩の松坂(ソフトバンク)をも超えてみせる。【和田美保】

 ◆横浜 1942年(昭17)創立の私立男子校。生徒数1009人。野球部は45年創部で、部員数79人。甲子園は春15度、夏16度目の出場。98年に史上5校目の春夏連覇。主なOBはソフトバンク松坂大輔、DeNA筒香嘉智ら。所在地は横浜市金沢区能見台通46の1。葛蔵造校長。

◆Vへの足跡◆

2回戦8-0向の岡工

3回戦12-0松陽

4回戦10-0相模原中教校

5回戦2-0向上

準々決勝16-3横浜隼人

準決勝8-4桐光学園

決勝9-3慶応