作新学院(栃木)が北海(南北海道)を7-1で破り、史上初めて春夏連覇を達成した62年以来、54年ぶり2度目の優勝を果たした。

 作新学院の小針崇宏監督(33)が、涙で喜びをかみしめた。「絶対に優勝旗を持ち帰りたいと思っていた。選手たちが頑張り抜いてくれて感激した」。就任10年目、母校を6年連続で導いた甲子園で宙を舞った。

 伝統の投手力に「攻めの野球」を加えた。今大会の送りバントは2度だけ。「アウトを1つ与えるより、強気の姿勢を出すのがうちのセオリー。自分のやり方です」。先攻を取り、無死一塁でも簡単に送らない。序盤から盗塁やエンドランを仕掛ける野球を貫いた。

 転機は09年夏。監督として初めて挑んだ甲子園の初戦で長野日大に敗れた。「監督の差だった。先に手を打たれても、見ているだけだった」と振り返る。その冬、次代の指導者を育成する「高校野球・甲子園塾」に参加した。箕島(和歌山)の故・尾藤公監督の「厳しくても愛情をもって叱りなさい」という言葉が突き刺さった。自分から選手に意思を伝えるように変わり、意識改革から着手。「やらされるより、やる練習」で常勝軍団をつくった。

 長渕剛の大ファンで、移動のバス内では選手とライブDVDを鑑賞する。昨秋はギターを弾きながら「とんぼ」や「逆流」を熱唱。「1歩前を進んでいくチームに合っている」と話す。昨年5月には第1子となる長女が誕生。「趣味も野球」という監督は「気持ちが切り替わるんですかね。普段とは違う顔になっていると言われます」と笑った。【鹿野雄太】

 ◆小針崇宏(こばり・たかひろ)1983年(昭58)6月22日、栃木県生まれ。作新学院では二塁手。2年生だった00年センバツで8強進出。3年時は主将。ロッテ岡田と1、2番コンビを組み、夏の栃木大会準優勝。筑波大でも内野手として活躍し、06年9月に母校の監督に就任した。