作新学院(栃木)OB江川卓氏(61)は、母校優勝の瞬間、感無量の面持ちだった。73年センバツで4強止まり。夏の大会は2回戦で銚子商(千葉)に敗れた。自分たちを超えた後輩たちの快挙を、まずはたたえた。

 「見事だった! 自分たちも経験したからよくわかるけど、炎熱の甲子園で勝つには、想像を超えた質量のエネルギーがいる。それが優勝ですからね。もう、すばらしいの一言ですよ。おめでとう!」

 決勝のポイントは「2回の守備」にあったという。1点を先制されてなおも2死一、二塁。1番打者が三遊間に快打を放つ。この痛烈なゴロを、遊撃手の山本拳輝主将(3年)が横っ跳びで捕らえ一塁アウトとした。

 「あのファインプレーで試合の流れを自分たちの方に持ってくることができた。1点に抑えたことが大きかった。相手のペースに傾きつつあったからね。これまでは、投打のバランスがいいチームという印象だったけど、きょうは攻守のバランスのよさが際立った」

 疲れの見える今井投手のところに、ピンチになるとチームメートがスッと集まる。打線が集中打でビッグイニングをつくり、守備でも美技でバックアップする。投・攻・守のまとまりは、チームの結束力の集大成だった。

 「作新の校訓の1つに『一校一家(いっこういっか)』というのがあります。全校生が一家の家族だと意識する中で養われたチームワークは、決して揺るぎません」

 江川氏は、OBとして味わう優勝の味を、そう言ってかみしめ直した。