ノーヒッターで大物食いだ! 大曲が10-0の6回コールドで昨秋秋田県王者の能代松陽に圧勝。創部69年目で春秋通じて初の東北大会出場に王手をかけた。地区大会前に左わき腹を痛め、今年公式戦初登板となった伊藤麟太郎投手(3年)が先発し、6回参考ながらノーヒットノーランの快投。打線も2回から毎回計15安打の猛攻で、昨夏サヨナラ負けした相手に雪辱した。

 10点リードの6回裏2死、最後の打者を二ゴロに仕留めた大曲・伊藤が、完全復活の雄たけびを上げた。打者19人に対して許した走者は、3回先頭の遊撃失策による1人だけ。内訳は三振1、犠打1、内野飛球2、外野飛球2、内野ゴロで12ものアウトを奪った。4回は3球、5回は4球、6回は5球でいずれも3者凡退。バックを信じて打たせて取る計43球の省エネ投球術も光り、「6回なので参考になりません。早い回から打ってくれたので、楽に投げられました。みんなが守ってくれた」と感謝した。

 最速130キロ前半の直球とカーブ、スライダー、チェンジアップを駆使するが、本調子ではなかった。4月下旬に左わき腹を痛め、主治医から投球再開の許可が出たのは1週間前。地区大会では1球も投げられず、背番号は地区大会の1番から10番へ「降格」した。「内心は悔しくて、結果を出さなければ」と臨んだ昨秋王者との対戦。右手中指に血マメができても、「ひたすらミットを目掛けて投げただけ。制球はバラバラでしたが、マメのおかげでボールが動いた。収穫は、とりあえずストライクが入ったこと」と冗談交じりで振り返った。

 昨年のドラフトで、大曲工から育成2位で広島入りした藤井黎来(れいら)投手(18)は小、中学校の1学年先輩にあたる。中学時代にチェンジアップを教わったことがあり、「タイプは違いますが、目標にしています」と尊敬する。

 打撃陣もかみ合った。4番高橋健真外野手(3年)が2ランと2点三塁打を含む3安打4打点。先発唯一の2年生、佐々木琉吾内野手も先制打を含む3安打と先頭打者の役割を果たした。高橋健は「4番として投手陣を支えたい」と言えば、伊藤は「ケアして準備したい。勝って東北大会出場を決めたい」。まず夏の第1シード権を獲得し、中2日になる由利工との26日準決勝に向け、英気を養う。【佐々木雄高】