横浜倒した夜、輝星は言った「俺、ゾーンに入った」

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<カナノウを語ろう(9)>

今夏の甲子園は、金足農(秋田)の吉田輝星投手(3年)に密着マークをさせてもらった。最速150キロを誇る直球、巧みな投球術以上に際立ったのが、コメント力だ。自身が「自分も楽しい方の人間」と言うだけあって、吉田の発する言葉には常にユーモアがあふれていた。鹿児島実との初戦前には「侍のイメージで、ぶった切ってやります」と意気込み、有言実行。3失点した大垣日大との2回戦後のお立ち台では「3点も取られたので、ぶった切ったとは言えないですね」と珍妙に返答した。

また、機転の利いた言葉にも助けられた。準決勝前日の宿舎取材。試合当日には先輩たちを34年前の準決勝で倒したPL学園の桑田真澄氏(50)がレジェンド始球式に登場するとあって、質問が殺到。それでも冷静に受け答えしたのが印象的だった。

吉田 キャプテンはじゃんけんが強くて、いつも後攻を取ってきてくれる。桑田さんを目の前で見てみたい。自分も絶対に優勝します! と言いたいです。

翌日の1面見出しは「輝星 桑田氏にV宣言」で決まり。実際はじゃんけんに負けて後攻は実現しなかったが、桑田氏と吉田の新旧両雄が並び立つシーンは見てみたかった。マスコミがほしがるコメントを的確に話す力は、相手打者の狙いを察知して投げるクレバーさと通ずる部分がある。

そんなクールな吉田が興奮気味に語った言葉があった。6番高橋佑輔内野手(3年)の逆転3ランに沸いた横浜との3回戦。1点リードの9回は149キロを連発し、150キロもたたき出して甲子園の寵児(ちょうじ)となった。その後の宿舎ではメンバーに「俺、ゾーンに入った」と胸を張って豪語したという。

第100回の夏を、そして吉田擁する金足農を担当できたことは、記者としてこれほどの幸せはない。この夏の興奮を、ありがとう。【16年~東北6県担当・高橋洋平】(おわり)

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