春季高校野球近畿大会が25日、奈良・橿原市の佐藤薬品スタジアムで開幕し、智弁学園(奈良1位)がセンバツ8強の智弁和歌山に9-7で競り勝ち、1回戦で実現した兄弟校対決を制した。

02年夏の甲子園3回戦以来、17年ぶりに実現した智弁対決を見ようと、早朝から多くのファンが球場に詰めかけた。第2試合は近江(滋賀)が高田(奈良3位)を7-4で下した。

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試合前からスタンドはざわめきであふれた。「本当にどっちがどっちか分からんな」「どっちが智弁?」「どっちも智弁や!」。一目で見分けが付かないぐらい、ユニホームデザインはほぼ同じ。だが、取り扱うメーカーが違うため、生地の色や「智辯」の文字体がわずかに違う。少し目立つ違いといっても、左袖のデザイン程度だ。

朱色が映える伝統の戦闘服があいさつを交わすと、歓声はますます高まった。序盤は和歌山のペースも、4点を追う6回裏から奈良が反撃。無死満塁で「試合ができるのを楽しみにしていた」という4番吉村誠人内野手(3年)が右中間へ同点の満塁弾。試合を振り出しに戻すと、7回裏にも3番坂下翔馬内野手(3年)の適時打などで3点を追加して逆転した。

昨秋の練習試合は奈良が2-25で大敗。公式戦では三度目の正直で和歌山に初勝利した。小坂将商監督(41)は「意識しました。自分も和歌山県人。智弁和歌山さんとやることがうれしく、倒したいという気持ちがあった。4番が良い仕事をしてくれました」と会心の笑顔だ。吉村も「智弁と言ったら和歌山といわれる。智弁学園と言われたい」ときっぱり。まずは近畿を制し、奈良智弁ここにありを示す。【望月千草】

◆2校のユニホームはメーカーは異なるが、デザインや色はほぼ同じ。違いを挙げると、まずは校章のある左袖のデザイン。ともに学校の経営母体である辯天宗のマークである桔梗(ききょう)の花の刺しゅうの下に「奈良」「和歌山」とそれぞれの県名をあしらっている。奈良は桔梗の上に乗せるように「高」と記し、和歌山は桔梗を貫くように横線が引かれている。

胸の「智辯」の文字は奈良が中央に詰まった字体で狭く、和歌山は横に開く字体でやや大きく見えるが、関係者によるとこれは刺しゅうの入れ方の違いによるもの。選手に協力してもらい、文字を定規で測定してみたが、直径、文字の太さもほぼ変わらなかった。文字の色合いは似ているが、奈良の方が少し濃いめ。

ユニホームのベースの色は、奈良の方がアイボリーが濃く、和歌山が白に近いアイボリー。メッシュの編み目は多少の差があり、光沢も入った奈良はナイターで映える仕上がり。また、奈良のズボンは侍ジャパンと同じ素材を使ったハイストレッチ生地で、ぴちぴちのものよりも伸縮が利いて動きやすい。帽子はともにメッシュ素材、奈良が角型、和歌山はこの春から丸型。両校のユニホームの違いは細部に宿っている。

◆過去の智弁対決 公式戦での対決は2度あり、智弁和歌山が2連勝だった。1回目は95年秋の近畿大会準々決勝。智弁和歌山が智弁学園に5-0で勝利した。当時1年生だった智弁和歌山の中谷監督も出場した。2回目は02年夏の甲子園3回戦。智弁和歌山が7-3で勝利。智弁和歌山は高嶋仁監督が、智弁学園は林守監督が率いた。林監督は01年春まで17年間智弁和歌山の部長を務めて高嶋監督と全国制覇の経験があり、師弟対決でも注目された。