心をひとつにする儀式 おかやま山陽/渾身の1枚

  • 18年3月29日、富島対星稜 試合前、グラウンドに水がまかれ星稜ベンチ前には虹が現れた
  • 18年8月18日、近江対金足農 9回裏、スクイズで金足農はサヨナラ勝ち。歓喜の輪に飛びつき喜び合う吉田(右から2人目)らナイン
  • 19年8月17日、智弁和歌山対星稜 14回裏にサヨナラ3点本塁打を浴び、歓喜する星稜ナインを横目に涙を流す智弁和歌山ナイン

<本紙カメラマン渾身の1枚>

センバツに続き全国高校野球選手権大会が戦後初めて中止となった。カメラマンとして球児の甲子園にかける思いを間近で見ていただけに、そのやるせない気持ちは推測できる。数々のドラマが繰り広げられてきた甲子園で記憶に残るシーンがある。17年夏、おかやま山陽(岡山)は初めて甲子園に駒を進めた。11年連続で出場している聖光学院(福島)戦を前にしたナインは気持ちを集中させようとベンチ前に集まった。その様子を切り取った1枚が前田充が担当する「渾身(こんしん)の1枚」です。その他印象的な瞬間を写真で紹介したいと思います。

仕留めた、撮ったぞー、と胸の内で叫ぶことがある。だが良いと思った写真が必ずしも紙面に掲載されるとは限らない。1ページに4試合の原稿が押し込まれると敗れたチームの写真が載ることはあまり期待できない。悔しくもあった記憶に残るショットは2017年8月10日に行われた聖光学院対おかやま山陽戦の試合前だった。

じっとしていても汗が噴き出してくる環境で前の試合の結末を写真送信していた時だった。シートノックを終えた甲子園初出場のおかやま山陽の選手たちがベンチから出てきて円陣を組み始める。目を閉じ、手を取り合って「心をひとつに」する姿にひきつけられた。写真を送信する手を止め、ナインに近づきシャッターを押した。ピントは迷いながらも手と手の重なりに合わせた。ぼんやりと何となく全体に合わせるよりも狙いを明確にし、今まで仲間とともに積み重ねてきたものを信じて戦おうとしている象徴のように思えたからだ。劇的な幕切れでも、感動のシーンでもない、試合前の何げない場面にも記憶に残るような印象的な瞬間がある-。これも高校野球の魅力の1つだと感じた。

試合は聖光学院の前に0-6と完封負けを喫した。硬式野球部には66カ条にも及ぶ部訓がある。堤尚彦監督が出会った本や人物から感化された言葉が厳選され、水道など選手が目にする所に張られているという。その1つに「甲子園を愛しているのではなく、野球を愛している」がある。球児が甲子園を目指すのは自然な成り行き。しかし今やその目標さえ奪われてしまっている。無念さに思いをはせながら手をつなぎ円陣を組む写真を見ながら思う。おそらくナインはこの部訓を改めてかみしめ、再び立ち上がるきっかけにしているのだろうと。

最近は終息に向けた明るいニュースを耳にすることも少しずつ増えてきた。世界に目を向けると韓国や台湾でプロ野球が開催されたり、サッカーでもブンデスリーガが再開された。「本当に大丈夫なのか?」という思いの半面「早く日本でも…」と期待してしまうのが本音だ。まだまだ不安な日々は続くが、私たちは終息を信じ、ひとりひとりが今やれることをやっていくしかない。互いに協力し励まし合い「心をひとつに」して。