来春の第93回全国選抜高校野球大会の21世紀枠候補として、大阪府高野連から推薦されている山田が、同じ公立で82年夏に甲子園出場経験がある春日丘と今年最後の練習試合を行った。

まさに山田野球での逆転勝利だった。同点の8回に4番のスクイズで勝ち越し点を奪うと、9回は本盗を決行した。

9回2死三塁で左打者を迎えたところで、春日丘はこの日先発で右翼にまわっていた左腕・米満海玖人(みくと)投手(2年)にスイッチ。すると、山田の金子恭平監督(41)は、右の代打小西樹外野手(2年)を送った。左対策ではなく本盗をさせるため、捕手から三塁走者を見えにくくするための壁役だった。

1球目はフルスイングして相手に警戒させ、2球目を投げる前に三塁走者を突入させるはずだった。だが、なぜか三塁走者但馬(たじま)海斗外野手(1年)には1球目の前と指示が伝わっていた。

投手がセットポジションに入ると、但馬が突っ込んできた。不意を突かれた相手バッテリーの隙を突いて本塁へ滑り込んだがアウト。タイミングはセーフだったが、小西が「僕の左足のかかとに但馬の足が入りました」とブロックしてしまった。

金子監督は「サインミスですね」と悔やんだが、狭い敷地、1日2時間程度と限られた練習時間の中で、1年に何度もないプレーを練習してきた底力を見せた。但馬は「こういうところが自分たちの強さ。ほかのチームがやらないことをやっていきたい」と話した。

山田は秋季大阪大会で84年の創部以来初の3位になった。3位決定戦では19年夏全国制覇の履正社を2-1で破った。公立高校では94年市岡以来26年ぶりに出場した近畿大会では初戦(1回戦)敗退も龍谷大平安(京都1位)に1-4と善戦。今後は12月11日に近畿地区6校から1校に絞られ、来年1月29日の選考会で全国9校の中から3校(西日本1、東日本1、地域関係なし1)が甲子園切符を得る。センバツの道は遠いが、この冬さらに小技に磨きをかけ吉報を待つ。【石橋隆雄】