創部11年目の神奈川・横浜翠陵に“日大三イズム”が取り入れられていた。「来夏ベスト32」を目標に掲げる同校が30日、年内の活動を終えた。29日まで15日間かけて行われた冬の強化練習は、西東京の強豪・日大三の合宿メニューを参考に練習が組み立てられている。甲子園常連校の厳しいメニューに挑む意図とは? 最終日の練習に潜入し、内情を探った。【阿部泰斉】
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日没後のグラウンド。ほとんどが大の字に寝転んだ。力を出し切った。涙を流す選手もいた。横浜翠陵の年末恒例、15日間の強化練習。その最後に課される12分間走は、前の日までの自分の走破距離を超えることが目標。田村亮汰主将(2年)は協力してくれた保護者へ、「皆さんの支えがあったから出来た強化練習でした。このご恩は結果で返します」と誓った。
創部11年目。これまでの夏最高成績は3回戦進出で、今秋も1回戦敗退。来夏の目標を「ベスト32」に置き、今年も18人の選手が厳しい練習に汗を流した。15日間のノルマは、野手が2万球の実打、投手は敷地内にある1周約1キロの山道を150周。さらに日々の最後は、強豪・日大三の合宿から取り入れた12分間走を行う。
厳しいメニューの裏には田中慎哉監督(34)の思いが込められている。「ウチに入学する生徒の多くは、受験で第1志望を落ちてしまった子なんです。だからチャレンジすることを怖がってしまうことが多かった。何かを成し遂げる経験をさせてあげたかったんです」。まだ監督就任前だった14年。日大三の強化合宿最終日を見学に訪れた。「昨日の自分より一歩前へ」。同校・小倉全由監督(64)の言葉に呼応するように、限界に達していたはずの選手たちが息を吹き返した。「これを取り入れれば、選手が自信をつけてくれるかもしれない」。日々のメニューの最後に、12分間走を組み込んだ。
日刊スポーツのYouTubeチャンネルには、「日大三・冬の強化合宿を乗り越えて」がある。きついメニューをこなす選手たちに密着した動画だ。田中監督はそれを見返し、現在の指導に役立てているという。エースの小間太惺投手(2年)は言う。「昨日の12分間走は4人に1周遅れにされました。今日は誰にも抜かれなかった。抜かされそうな時、力を出したら耐えられたんです。『昨日の自分』を超えたと実感できました」。15日間の強化練習を完走した選手たちの表情は、どこかりりしく見えた。
▽横浜翠陵・小谷野知之コーチ(日大三出身) 設備に大きな違いがある中で、選手たちは引けを取らないくらい頑張っていると思います
◆横浜翠陵 1986年(昭61)に横浜国際女学院翠陵高等学校として創立された私立校。11年、共学化に伴い現校名に。「特進」「国際」「文理」の3つのコースがある。校訓は「考えることのできる人」。野球部は11年創部。甲子園出場歴なし。部員20人(マネジャー2人)。所在地は横浜市緑区三保町1。田島久美子校長。

