台湾と韓国に2試合連続で大敗していた日本が、オランダに5回コールドという形ながら何とか勝利を収めた。田村藤夫氏(62)は、絶対に負けられないオランダ戦で見せた先発川原の丁寧なピッチングを勝因に挙げた。
オランダの先発投手は軟投タイプ。日本代表の打線は台湾、韓国戦でのスピードボールに圧倒された直後だけに、130キロ出るかでないかの遅球に戸惑いを隠せない。得点はあまり望めない状況を踏まえた、川原のピッチングが光った。
甲子園では148キロの快速球を見せていたが、オランダ戦はスピードよりもコントロールを重視した。打者18人から6三振を奪い、無四球。3安打のうち2度が先頭打者だったが、後続からいずれも2三振を奪い、確実にアウトを重ねた。
松尾とのバッテリーも息が合っており、スプリット系がよく落ち、カットボール、スライダーの曲がりもよく制球されていた。この試合の最大の目的は「点をやらない」ことであり、それを川原はよく理解している、そういうピッチングだった。
5回終了したところで降雨で1時間半近く待機することになった。肩も冷え、続投したとしても、残り2イニングのピッチングに影響がでる可能性はあった。首の皮一枚つながる勝利という印象だった。
打線は3回無死一、二塁で浅野が犠打。はじめて見たが、落ち着いてしっかり三塁側に決めていた。おそらく、ここまでのバッティングの状態が思わしくないのだろう。これまでなら打たせる場面だったが、馬淵監督はバントを選択。しっかり決めて好機を広げた。
ここで黒田の二ゴロで三塁走者藤森が先制のホームを踏む。だが、二塁走者海老根は三塁に進まなかった。黒田の二ゴロが投手の横を抜ける当たりだったため、海老根は帰塁してしまったのだろうが、1死二、三塁でゴロゴーの状況。投手が捕球したとしてもホームに投げる。海老根はゴロが飛んだ瞬間に三塁に進んでいなければならない。
これが無死二塁なら、帰塁もあり得る。また、遊ゴロならば、打球判断として二塁にそのままというケースも考えられる。しかし、この場面では投手に捕球されたとしても、投手の横を抜けて二ゴロになっても、いずれの場合も三塁に進んでおくのが基本だった。
また4回1死二塁で二塁走者渡部が、光弘の右中間への深い当たりでタッチアップしなかった。深い当たりで、打った瞬間には抜けたかなと感じるような打球だったが、センターは捕球体勢に入っていた。
基本として、ダイビングキャッチ、背走してのキャッチ、外野手が打球を追ってぎりぎりで捕球したなどを含めて、二塁走者はハーフウエーで打球判断し、捕球体勢に入ったところで二塁に戻り、そこからタッチアップする。
タッチアップしていたとして2死三塁。三塁まで進んでいれば、暴投、捕逸などでも点は入る。また、暴投を恐れて変化球が甘くなる可能性もある。先の塁を取るという走塁が、この2つのシーンでは足りなかった。2人とも大阪桐蔭、智弁和歌山という場数を踏んだ全国的な強豪チームの主力選手ということを考えると、頭の中で状況整理ができていなかったのだろうと想像する。
それだけ選手は追い込まれており、平常心ではなかったということなのだろう。国際大会ならではの緊迫感、絶対にオランダには負けられないという重圧、軟投派のオランダ投手は腕が遅れて出てくるため打ちづらい。いろんな心理面が作用したと感じる。そういう中で、冷静に動けるかどうかが、鍵を握る。
走塁面にはそうした判断の甘さは感じられたが、そういう緊迫感の中でも5回まで制球重視のピッチングをぶれずに貫いた川原-松尾のバッテリーの冷静さが光った。
あとは決勝進出を目指し、米国戦に全力でぶつかってほしい。結果は後からついてくるが、それこそ勝敗は馬淵監督に任せ、選手は目の前のプレーだけに集中して、失敗を恐れず大胆に動いてほしい。甲子園とはまた異質の緊張感の中で、どこまで冷静に、そして全力でプレーできるか。等身大の自分自身を知る最高のチャンスと思って、米国に挑んでもらいたい。(日刊スポーツ評論家)

