センバツ大会を現地取材し、山梨学院-京都外大西の試合から、特に印象に強く残ったプレーをリポートする。

   ◇   ◇   ◇   

バックネット裏の記者席から見ていたからこそ、良くわかる超レアプレーだった。4回裏、山梨学院の攻撃は1死二、三塁。京都外大西の内野陣は、二塁走者をけん制していたショートとセカンドが前に出た。二塁走者はそれに合わせてリードを広げた。

二塁ベースはがら空きとなる。すると、ライトがものすごい勢いでダッシュしてくる。そのまま二塁ベースに入り、投手からのけん制を受けようとした。投手の二塁けん制を、ライトが捕球に入る場面を、私は初めて見た。投手のけん制は疑投だったために、ライトが本当にけん制を捕球するところまではいかなかった。二塁走者もしっかり帰塁していたが、こんな発想はなかった。

アウトにできる可能性は極めて低い。しかし、何事もやってみないと分からない。万が一にもアウトになれば、もしくはアウトにはならずとも、ギリギリのプレーになれば、守っている側としても俄然盛り上がる。誰も試したことがないトリッキーなプレーを、こうして甲子園で出せたことだけみても、深く記憶に残るワンプレーだった。

一方、山梨学院も2回表の守備で魅せている。無死二、三塁。バントが予想される局面だった。投手が投げる直前にサードが猛然とホームへチャージ。この動きにつられるように三塁走者も大きくベースから離れる。次の瞬間、投手は大きく外角にウエスト。同時にショートはがら空きの三塁のベースカバーへ動いた。

一連の動きは流れるようだったが、捕手の三塁送球のリズムがワンテンポだけ遅れた。その分だけ、帰塁が間に合いセーフとなったが、これも三塁手のチャージに惑わされて動いてしまう走者の心理を逆手にとったトリックプレーだった。

京都外大西は試合前のシートノックで、ライトゴロの練習をしていた。ライトがチャージして、一塁に送球。プロでもセ・リーグでは投手が打席に入った時は、右翼手は前進守備でライトゴロを狙っていたが、これだけ明確に試合前のシートノックでライトゴロを想定した動きには驚かされた。

さらに意表を突かれたのは、同じく京都外大西のシートノックで、内野陣が意図的に全員が打球をファンブルしていたことだった。最初は、どうしたものかと不思議に感じていたが、途中でその意図が理解できた。

グラブに当ててこぼし、素早く拾ってホームに正確に送球していた。相手は走塁面でもよく鍛えられた山梨学院。昨春の王者だ。その強豪相手に、内野陣のミスと思わせて、逆にピンチを切り抜けようというなかなかの策士ぶりの光景だった。

京都外大西は5回裏の守備で、無死から8番平野天斗内野手(2年)の右前打が、あと少しでライトゴロという惜しい場面を作っていた。途中から、外野では激しく雨が降りはじめ、突風が舞い続ける悪天候となったが、京都外大西が次々と繰り出す守備面での新しい発想は、本当に新鮮だった。

両チームともに、これまでのセオリーに、何か新しい+αを加えたいという意欲に満ちていた。それを、まずやってみようという姿勢は、見ていて驚かされつつ「そうか、そういう狙いか」と、意表を突かれるものばかりだった。

まさか、甲子園で二塁けん制にライトが入るとは。1%も予想できなかった。しかし、こうしたトライは、やがて新しい戦法としてさらに形を変え、それぞれの高校が研究を重ね、また違う形で進化していくのではないか。

まず、やってみる。アウトにしようとトライする高校生の全力プレーは、迫力十分だった。セオリーに染まった私の思考には、顔に吹き付ける早春の寒風と同じくらい、その斬新さは脳裏に突き刺さった。(日刊スポーツ評論家)